鹿児島の農林水産物の輸出額は、昨年度は311億円で過去最高を更新しました。その4割を占めるのが養殖ブリを中心とした水産物で、その額は和牛など畜産物を上回っています。
政府が歴史的円安を追い風に農林水産物の輸出拡大を目指す中、鹿児島の水産物の存在感が高まるのか注目されます。
(ブリ生産者 池田安彦さん)
「愛情をたっぷり注いだブリ。おいしい。自信を持って提供できる」
長島町の東町漁協では「鰤王」のブランドで養殖ブリを生産し、昨年度はアメリカを中心におよそ750トンを輸出しました。鹿児島の養殖ブリは生産量が日本一で、国内からの輸出量の半数を占めています。
(東町漁協加工共販課 岩下久明・課長)
「ブリは魚体が大きければ大きいほど脂がのっている。ここ最近は『魚体は大きいほうがいい』という声が輸出先から聞こえる。客のニーズに応えたい」
(東町漁協 長元信男・組合長)
「特に円安で輸出に追い風が吹いている。日本は人口も減少し、消費も落ちてくる。海外しかない」
養殖ブリや養殖カンパチなど鹿児島の水産物の輸出額は、2020年度は63億円と新型コロナの影響で前の年度の6割まで減りましたが、和食ブームやアメリカ経済の回復を背景に需要が増えていて、昨年度は135億円と過去最高になりました。
(県水産振興課 田中敏博・水産流通対策監)
「全国の中でもブリの生産量は1位。スケールメリットを生かした輸出の取り組み。そして、輸出に特化した加工場が多い。博多港から出しているので『生産の利』『地の利』がある」
東町漁協は1998年、国内の養殖漁業で初めて食品製造の国際的な衛生基準=HACCPの認証を取得し、輸出に力を入れてきました。輸出先はアメリカが中心ですが、新たな市場として4億5000万人が暮らし、世界の食文化をリードするヨーロッパを狙っています。ただ、「世界一厳しい」といわれる衛生管理基準をクリアするためのハードルは残っています。
(東町漁協加工共販課 岩下久明・課長)
「衛生証明書の準備など書類の発行が大変。書類発行が簡単にできれば、ヨーロッパ方面にも輸出しやすくなる」
そうした中で、ヨーロッパ市場を狙った別の取り組みも続いています。
(枕崎フランス鰹節 大石克彦・社長)
「これが一般的に言う薄削り。これが一番小さな袋で20グラム、これが40グラム」
パッケージにフランス語や英語でだしをとる手順が記されたかつお節。インド洋で獲ったカツオをフランスの工場で加工したものです。
(記者)「フランス産のかつお節。袋を開けると、上品な香りがします」
県産のかつお節は和食ブームを背景に、アメリカや東南アジアへの輸出を伸ばしていますが、ヨーロッパには輸出していません。ヨーロッパでも和食人気などから潜在的な需要はあるとみられるものの、かつお節をいぶす過程で発生する化合物がEU独自の基準で厳しく規制され、加工後にEU圏内に持ち込むことができないためです。
そこで、枕崎市の生産業者10社がフランスに工場を建設し、2017年から本格的に現地生産をしています。
(枕崎フランス鰹節 大石克彦・社長)
「輸出したいけれど、できない。輸出できればそれはいい」
一方で、かつお節本来の風味を損なわずにEUの基準をクリアできる製造技術の研究が、2024年度までの実用化を目指して続けられていて、将来的に目指しているのは、枕崎産かつお節のヨーロッパへの輸出です。
(枕崎フランス鰹節 大石克彦・社長)
「フランスに工場をつくったが、輸出をあきらめたわけじゃない。ファンをいっぱいつくって、『かつお節がヨーロッパにないといけない』という足場をつくり、輸出できればもっと広がっていく」
歴史的とも言われる円安が進む中で、政府は農林水産物と食品の輸出を「2025年に年間2兆円」にするという目標を前倒して達成したいと動き出しています。
そうした中で、鹿児島が存在感を高めることができるのか?水産県としての挑戦が続きます。
(県水産振興課 田中敏博・水産流通対策監)
「鹿児島の水産物の輸出は無限の可能性がある」
Q.農業県と言われる中で(水産の)存在感は?
(県水産振興課 田中敏博・水産流通対策監)
「先日、(和牛)共進会もあって牛肉も一等賞をとったが、水産も間違いなく一等賞。畜産に負けないよう頑張りたい」
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