「勘ぐらないで」高市氏の狙いと今後の展開、政局の行方を左右する要因

FOIP戦略本部再開の仕掛け人である高市氏は、「政局に向けた動きではない、勘ぐらないで」と否定している。元々2021年、高市政調会長時代に設置された本部だが、長く休眠状態にあった。それが3月に高市氏が「トランプ政権下では今こそFOIP」だとして、麻生氏に依頼して再開されたのがこの戦略本部である。
しかし、高市氏の動きは党内でも注目を集めている。高市氏は自民党が選挙に勝つために東京都議選や参院選の候補者の応援活動に加え、講演などの依頼があれば積極的に行っている。また減税を求める声が多い参議院では、「食料品などに適用される消費税の軽減税率について0%に引き下げる」考えを示す高市氏に共鳴する議員も多いという。
では、今後の政局の合図になり得るものは何なのか。政治部記者は以下の点に注目している。
1. 年金法案が衆議院で可決された後の動き
2. 高市氏と岸田文雄前総理の会談の有無
3. コメ価格の動向と小泉進次郎環境大臣の対応
4. 国会会期末における内閣不信任案の行方

後半国会の焦点の一つ、年金制度改革法案を今の国会中に法案を成立させるためには、5月中に衆議院を通過させる必要がある。同じく目玉とされていた、「選択的夫婦別姓」や「企業・団体献金」の取り扱いについては、今の国会で結論を見ることは難しい情勢である。ある自民党幹部は「6月になって衆議院から法案が離れたら、政局的な話が増えてくる」と語っている。
また、高市氏が岸田前総理と連携を取れるかどうかも注目点である。高市氏は去年の総裁選で旧岸田派の支持が得られず、決選投票で敗北した。仮に内閣不信任案が可決され内閣総辞職となった場合、自民党は両院議員総会で緊急的に総裁を選ぶことになる。そうなった場合に衆目一致する候補となるには、旧岸田派からの理解は必要となるだろう。
コメの動向も政権を左右する。火中の栗を拾うかのように小泉進次郎氏は農林水産大臣に就任した。ある自民党関係者は「ここで農水大臣を受けて上手に乗り越えられれば、一気に総裁最有力候補になる」と語っており、小泉氏としては手腕が試されるだろう。
特に内閣不信任案の提出については国会会期末の重要な局面となる可能性がある。野党がまとまり提出すれば可決する状況であり、その場合、内閣総辞職か解散のいずれかを選択することになる。ある党幹部は「森山幹事長は不信任案が出たら解散説。どっちにしろどん詰まりな状況になるから」と語る。
その森山裕幹事長の存在感も無視できない。消費減税に関しても「政治生命をかける」と言って、党内の反対意見を封じ込めた森山氏の手腕が、今後の政局の行方を左右する可能性もある。
石破政権の行方、そして自民党内での次期総裁をめぐる駆け引きは、今後さらに激しさを増していくことが予想される。FOIP戦略本部の動きは、その序章に過ぎないのかもしれない。
〈取材〉TBSテレビ政治部 大室裕哉