絶滅危惧種に指定されているウミガメにある異変が起きています。「オスが産まれない」。種の絶滅に繋がる恐れのある事態の原因のひとつが、気候変動だと指摘されています。

アメリカ南部フロリダ州。大西洋沿いにビーチが広がります。

記者
「ウミガメの産卵地として知られるフロリダのボカラトンビーチです。ここ数年、ある異変が起きています」

ここボカラトンビーチには絶滅危惧種アオウミガメをはじめ、毎年1000匹ものウミガメが卵を産みます。夜行われる産卵を妨げないよう浜辺の街灯は陸側に向けられるなど、ウミガメと共存しようという様子も。

ただ、ここフロリダで20年ウミガメの保護と研究に取り組むワイネケン教授は、いま異変が起きていると明かしました。

ワイネケン教授
「これらはすべてメスです。こちらもそうです。100%メスが産まれる年が増えています」

ワイネケン教授によると、ここ数年、卵から産まれるオスの割合はなんと5%以下。なぜオスが産まれないのか。朝7時、研究チームの実態調査に同行しました。

記者
「卵ですね」

さらに巣を掘り進めると…

記者
「赤ちゃんです。生きている」

孵化したばかりの子ガメや卵が見つかりました。そして研究チームが取り出したものは…

アンダーソン研究員
「温度を記録する装置です。巣から取り出して研究室に持ち帰ります」

アメリカ海洋大気局によると、砂の中で産まれるウミガメは摂氏27.7度未満で孵化するとオスになり、31度を超えるとメスになるとされます。ウミガメの性別は巣の温度で決まるというわけです。

このため、研究チームは巣の温度を測定しつつ、オスとメスの比率を調べていますが。

ワイネケン教授
「20年間の調査で、毎年、記録的な高温のデータを見続けています。恐ろしいことです。ウミガメは今、気候変動の影響に直面しています」

巣の温度が高いままでは、将来メスばかりとなり、ウミガメは繁殖できなくなるおそれがあるというのです。

また、影響は産まれてきた個体にも。ワイネケン教授の研究では巣の温度の通常の範囲は26度から32度ですが、34度になると発育に異常が増え始めます。

調査している巣の温度は今、36度まで上昇しているといいます。複数の巣を調べてみると…

アンダーソン研究員
「孵化できず死んでしまった卵が74個。産まれてきたのは29個でした」
ジャーマニー研究員
「この巣には100個ほど卵がありましたが、孵化率はおよそ10%でした」

これまでビーチでは7割から8割の卵から子ガメが誕生していましたが、今年は5割程度。100個あった卵が1つもかえらなかった巣もありました。ウミガメの生育環境がますます悪化している状況がうかがえます。

ワイネケン教授
「メスの割合が高いだけでなく、巣の温度が高くなり過ぎて、子ガメたちが生き残れないことを懸念しています」

データの記録を終え、静かな夜の海に放された子ガメたち。これから厳しい現実が待ち受けます。成体になれるのは通常1000匹に1匹。さらに性的に成熟するまで25年から35年かかるといいます。

『今の気候の変化が、将来どんな影響を与えるのかすぐには分からない』
ワイネケン教授は訴えます。

ワイネケン教授
「温室効果ガスを削減し、環境への影響を削減することが重要です。カメだけではありません。私たちもやがて、生きていくことができなくなるかもしれません」

次の世代に命をつなぐために今、なにをすべきなのか。私たちが問われています。