「罪を犯すとき死刑のことを考える人なんていない」死刑制度は犯罪抑止につながるか

記者
「毎日どう過ごしていますか?」

デネス死刑囚
「どう過ごしているかって?朝はトレーニングです。武道やテコンドー。跳んだり、体をひねったり、ダンスも好きです」

記者
「今、どんな心境ですか?」

デネス死刑囚
「以前は無知だったと気づくようになりました。私は教育も受けていませんでした。この刑務所で、自分で教養を身につけてきたのです。私は暗闇の中にいました。愚かで自分勝手でした」

事件が起きたのは1996年。ビルの一室にある宝石店で店主が襲われ、射殺された。

警察は当時39歳だったデネス死刑囚と兄を逮捕。翌年、デネス死刑囚は死刑判決を受けた。

デネス死刑囚はキューバで生まれ、3歳の時に一家でアメリカに渡った。学業不振で高校を中退した後、宝石商になったが酒や薬物に溺れたという。

家庭を持っても妻や子どもを顧みることはなく、荒んだ生活を送った末の強盗殺人だった。

死刑判決をどう受け止めたのか。

デネス死刑囚
「それは始まりだと、新たな生き方だと感じました。刑務所に入った日に、自分の人生を変えようと決意したのです」

獄中で聖書と出会うことで学ぶことの大切さを知り、絵や彫刻などの創作活動を通して自身が犯した罪と向き合えるようになったという。

記者「被害者にはどんな気持ちですか?」
デネス死刑囚「誰も傷つける必要はなかったと後悔しています」
記者「死刑が怖くないですか?」
デネス死刑囚「死を恐れていません。死は次の世界への通過点にすぎません」

死を恐れていないと話す一方で、自身に下された判決については不満を持っている。

共犯者の兄が自分が銃撃したと認め、司法取引により死刑を免れた一方で、デネス死刑囚は「撃ったのは自分ではない」と無罪を主張したことで、死刑判決を受けたからだ。

デネス死刑囚
「たくさん悪いことはしましたが、誰も殺していません。死刑に値する罪ではありません」

死刑制度についても、犯罪の抑止にはなりえないと、反対の立場だ。

デネス死刑囚
「罪を犯すときに死刑のことを考えている人なんていません。彼らは無知で愚かで分別がないのです。人を傷つける人たちに自覚なんてありません。だからこそ、処罰ではなく教育が必要なのです」

制限時間の1時間が終わり、面会は終了した。