韓国ソウルの繁華街・梨泰院で起きた群集事故。日本人2人を含むこれまでに154人が亡くなりました。当時、現場では“群集雪崩”が起きたとみられます。安全対策に疑問の声が上がるなか、私たちは、密集した状況での事故をどう防げばよいのか。現場を取材しました。

■「嘘であってほしい…」韓国の群集事故で20代の死者は103人 韓国の若手俳優も死亡

10月31日午前6時ごろ、北海道の自宅を出発した冨川歩さん。

芽生さんの父 冨川歩さん
「かわいい子でしたよ、これからでした…早く会いたいです…」

韓国・ソウルに語学留学中の娘・芽生さん(26)の悲報は、突然もたらされました。
 
事故の3時間前に娘と交わした最後のやりとり。

芽生さんからのLINE
「ビビンバ美味しかったよ!!今日は同じクラスのフランス人に会う」

韓国語が好きで、6月から半年間の予定で留学していた芽生さん。このLINEのあと、連絡がつかなくなったといいます。

芽生さんの携帯電話は、事故現場で見つかりました。

芽生さんの父 冨川歩さん
「最終的に指紋で一致しましたと。そういうことです。嘘であってほしい…」

歩さんはソウルへと向かいました。

ソウルの繁華街・梨泰院で29日に発生した群集事故。154人が死亡し、うち20代が103人と最も多くを占めました。

韓国の若手俳優のイ・ジハン(24)さんも死亡。
日本人では小槌杏(18)さんも亡くなっています。

杏さんの祖父によりますと、8月末に語学留学に行ったばかりだといいます。

小槌杏さんの祖父
「かわいい子だったので、胸が張り裂けそうな感じです。送り出したのは『本当に頑張ってね』って、まさかこんなことになるなんて思ってもいなかったので」

事故現場はいまも規制線があり、入ることができません。

山本恵里伽キャスター
「事故が起きた現場の道です。非常に細く狭い道ですね。今もまだ両わきには物が散乱しているような状況です」

金属製のポールはななめに曲がり、プラスチック製のポールは根元からへし折れていました。

現場では午後2時から現場検証が始まりました。白い服を着ているのは科学捜査員です。

山本キャスター
「事故が起きた道を下から、そして上から、複数の角度から写真を撮って確認しています。現場のすぐ近くには梨泰院駅があります。梨泰院駅の出入り口付近にはたくさんの花が手向けられています」

■立ったまま気を失った人も 幅3メートルほどの路地に人が密集

幅3メートルあまりの路地で多くの人が亡くなった今回の事故。当時、現場で何が起こったのか。

特に犠牲者が集中したのが20平方メートルに満たないエリアです。
韓国メディアによると、犠牲になった154人のほとんどがこのエリアにいたということです。
あまりの密集状態に、壁をよじ登る人の姿も見られました。

現場にいた人
「私が身長156センチだが、埋もれて若干酸欠状態。上を向くとちょっと楽みたいな状況」

その現場を撮影した、事故が起こる30分ほど前の映像を見ると、画面手前に歩いて来る人たちと奥に歩いて行く人たち、左右に2つの流れができています。

事故現場となった路地は、この梨泰院のメイン通りからの流れ込む人と、駅の出入り口からの人の流れが合流するポイントになっていたのです。

さらに、両側にはホテルの壁と飲食店などがあり、逃げ場がなくなったことで被害が拡大した可能性があります。

現場にいた人
「歩いて突然、本当に進めなくなったタイミングがあった。引き返せみたくなった、みんな。そこで引き返そうとする人たちと、あと地下鉄駅の方からまだどんどん上がってくる新しい人がいっぱいいたんで、前にも後ろにも行けなくなるようなタイミングがあった」

当日、梨泰院に集まっていた人は10万人とも言われます。
韓国メディアは人が密集し、立ったまま気を失った人もいたとする目撃証言を報じています。