腹圧を上げるために発声練習も
北口はこの冬、やり投につながるヒントを得るために、いくつもの競技を行っている。水泳、体操、クロスカントリースキー、バドミントン、柔道、ダンス、ハードルに加え、オペラの発声練習にも取り組んだ。
「腹圧を高めるために、一昨年くらいから意識的に投げるときに声を出してみたりしてきたんです」。
“シャウト効果”が投てきに現れることは、以前から言われてきた。体幹の固定性を高め、筋力発揮に必要な神経伝達を活性化させ、より大きな力を出すことができる、とされている。投げるタイミングが明確になる、という指摘もある。
「オペラは前にいるお客様たちに声を届けるので、前に向かって音を発する発声なんです。私も自分の声を使ってやりに、前に飛ぶ力を伝えたいと思って声を出していました。これは習いに行ってみてわかったことですが、的が大きすぎると遠くまで、綺麗に通る声にならないんです。的を絞った中で力を使わずに声を出せると、しっかり通る、響く声になる」。
北口は関節の可動域の広さなど体の柔軟性が武器で、やりに力を長く加えられる。そのこととも通じる部分がある、と感じられた。「他の選手はここでしか投げられない、というポジションがあるのに、私はだいたいこの辺でと、広い幅で投げられてしまいます」。
それも真っ直ぐにやりを投げられない一因だとしたら、そんな簡単なことではないだろうが、オペラの発声練習がポイントを絞った投てきにつながるかもしれない。
GGPでは北口の投てき時の発声も、ちょっとした観戦のポイントになる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)