福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は、震災や食の変化など様々な壁に直面しながらも、「創作かまぼこ」で生き残りをかけるいわき市の「かまぼこ店」です。

彩鮮やかな大きなズワイガニ。食をそそるポテトやチーズ。まるでケーキのように見える逸品の数々。その名も「シーフードケーキ」。これらはすべて「かまぼこ」です。

いわき市平にある「かねまん本舗」。良質な水と原料をもとに、絶妙な「塩加減」や「練り加減」、温度管理に細心の注意を払いながらかまぼこを製造していきます。

「かねまん本舗」が創業したのは1972年。2代目社長の遠藤貴司さんは、去年、父親から会社を引き継ぎました。遠藤さんは、かまぼこの食品としての魅力についてこう話します。

--遠藤貴司社長「手軽に食べられて火を通さず、手も汚れないというのが一番いいのかなと思っています。」

かまぼこの製造を始めたのは当時、横浜で働いていた父親の遠藤邦雄さんが、魚の加工業をしていたいわき市の実家に戻ってきたことがきっかけでした。

--遠藤貴司社長「当時、いわき市の常磐のかまぼこは最盛期で、かまぼこ屋さんが相当あったんですね。ただ、加工だけでこれから食べていくのは大変だという時代背景もあったので、業種が伸びているかまぼこをはじめたいということで創業したと聞いています。

かつていわき市は、「板かまぼこ」の生産量が日本一を誇りました。しかし、「食生活の変化」などで生産量は年々減少しています。

こうした中、「シーフードケーキ」と名付けたのには、次の世代においしいかまぼこを継承していきたいという思いがありました。

--遠藤貴司社長「この貴重な魚肉たんぱくの栄養源を、若い人にも食べてほしいということで、目で見て楽しめるようなかまぼこにしたいということで、まさしく“海のケーキ”じゃないかということで“シーフードケーキ”と名付けました。」

そんな、「かねまん本舗」にとって転機となったのは、14年前の東日本大震災でした。

--遠藤貴司社長「震災になってから出荷することができなくて、少しでも避難所に持って行って魚の魚肉たんぱくを取っていただければ、みなさんの体にも精神的にもいいのかなということでお配りさせていただきました。喜ばれましたね。」

かまぼこの持つ力について再確認した一方で、復旧まで時間がかかり、一時は廃業も考えていたといいます。

--遠藤貴司社長「もうかまぼこ屋さんは多分続けられないのではないかと。ただそういう光景だったり喜んでいる顔を見ると、無くしてはいけないなという気持ちになって、もう一度再起しようということで、現在に至っていますね。」

現在販売している「創作かまぼこ」は28種類。ショーケースにもずらりと並びます。

中でも、自慢は全国蒲鉾品評会で水産庁長官賞を受賞した「ポテ&チーズ」。すり身にジャガイモとチーズを混ぜ込み、表面をこんがりと焼き上げました。頂いてみると・・・

--水津邦治アナ(TUFアナウンサー)「ポテトとチーズが本当にまろやかで、スイーツ感覚の蒲鉾ですね。おいしい!」

さらに、地元の中学生たちと共同開発した最新作「カレーな三姉妹」。「あまくち」「ふつう」「からくち」の3つのカレー味が楽しめます。

次々と商品開発をするのには「かまぼこの魅力」をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いがあります。

--遠藤貴司社長「練り製品の良さを知ってもらうには、時代の流れに合ったものを作っていかないと、なかなか残るのは難しいのかなと思うので。そういった観点で新しく商品開発ができたらいいなと思っています。」

店のもうひとつの特徴が、広い「くつろぎスペース」があること。訪れる客に、ゆっくりとかまぼこを味わってもらい、ここが交流の場になってほしいからだといいます。

--地元の客「なかなかお茶が出てくるというお店はないですね。買う前に試食ができるというのは良いことです。」

遠藤社長の夢はさらに広がります。

--遠藤貴司社長「ここにかまぼこ屋さんがあって、周りにもっと違う業種の企業さんが来て、ここが一体としたまちになれば若い人たちも移り住んできてくれるでしょうし、ここにまた新たな文化ができて、ここから情報を発信すればもっともっといわきが楽しくなってくると思います。ここ一体を中心としたまちを作りたいなと思っています。」

かねまん本舗は、これからも「かまぼこ」・「シーフードケーキ」を通していわきの魅力を発信し続けていきます。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年5月15日放送回より)