■「もう一度、規模を見直せ」岸田総理が飛ばした指示

「景気の下振れリスクも考慮して、もう一度、規模を見直せ」
自民党内で財務省の動きへの反発が高まったことを受けて、岸田総理は財務省の示した予算額「25兆円」の見直しを指示した。
財政の規律を重視し、そもそもは「15兆円規模」の経済対策を目指していた財務省にとって、大きな後退を意味した。萩生田氏の“禁じ手”返しを受けて、財務省幹部が急きょ、政調会長室に駆けつけ、その日の内に、一気に約4兆円が積み増され、「29兆円規模」に予算額が拡大された。目標とする「30兆円」には及ばなかったが、萩生田氏らによる短時間の巻き返しが際立つ結果となった。
■「積極財政」VS「財政規律」

10月28日に閣議決定された総合経済対策の規模は29兆1000億円。萩生田氏は記者団を前に「物価高克服、経済再生実現のための総合経済対策として、タイトルにふさわしい内容と規模のものになった」と胸を張った。同時に財務省との攻防を振り返り、「中身が決まって初めて規模が決まるので、規模が先に決まったら、そこに中身を押し込まなきゃならないことになる。政府・与党でお互いに反省して、しっかり連携できる体制を作っていきたい」と牽制するのも忘れなかった。
一方で、多額の補正予算の編成を繰り返すことによる財政悪化を懸念する声は財務省以外からも上がっている。
「財政的なことをしっかり考えて予算編成をしておかないと。外国を見ても教訓になるような国もありますから、そういうことにならないということが大事」
自民党四役の一人、森山裕選挙対策委員長は、大型減税など、財源の見えないバラマキ政策がポンドの通貨としての信用を失わせ、トラス前首相の交代の要因となったイギリスを念頭に警鐘を鳴らす。
また、鈴木財務大臣は閣議決定後、今後の連携をこのように強調した。
「与党の議論を無視をして財務省の考えを押し通すとか、そういうことは毛頭考えていない」
「50兆規模が必要という方もいれば30兆が発射台という方もいた」
だが、財務省内には依然として不満が渦巻いている。
これから議論が本格化する来年度予算編成では巨額の増額が予定される防衛費をはじめ、自民党と財務省の財源を巡る綱引きが激化することが確実視される。
次なる、“仁義なき戦い”はどんな結末を迎えるのか。そして、国民に何をもたらすのか。その動きを注視していきたい。
(TBSテレビ報道局政治部・与党担当 守川雄一郎)