【高野由美子さん】「鼻血も止まらない、熱もある状態だったけれど、本人は『もう帰る、帰る』っていうふうに喜んで『じゃあ、帰るか』って。自分の部屋に行く時、うれしそうに友達みんな寄せて」

移植後初めて帰ってきた自宅。大好きな友人や家族に囲まれた敏行さんは、とてもうれしそうでした。しかし次の日、体調が急変。敏行さんは、由美子さんに抱えられながら旅立ちました。骨髄移植から42日目のことでした。18歳でした。

【高野由美子さん】「今までは口開けば『腹減った。金くれ』しか言わなかった子が、ずっと『こうだった。ああだった』って話しもしてくれたし。充実した、いい親子関係ができたかな。ドナーさんに感謝ですよね。移植から亡くなるまでの42日間も私にその時間をくれたっていうのが、すごくうれしかった」

敏行さんが亡くなった後、高野さんは夫婦で骨髄バンクのドナー登録をしました。迷いはありませんでした。

3年後、由美子さんはドナーの候補者に選ばれ、健康診断や最終同意を経て骨髄を採取する手術を受けました。退院後、敏行さんにこう報告したそうです。

【高野由美子さん】「『恩返ししてきたよ』って。『お母さん、提供してきたからね』とか言ってましたけどね」

由美子さんは、血液の病気になり移植が必要となる状況は誰にでも起こりうることを、もっと多くの人に知って欲しいと願っています。

【高野由美子さん】「型が合うっていうのが、いないんですよね。あなたのその白血球を待っている患者さんが本当にどこかにいる。その人のために助けてあげてほしいなと思うんです」

一人の協力で救える命がある…。由美子さんが、敏行さんから受け継いだバトンです。