先入観を逆手に取る

野々垣氏は「美術装飾の仕事とは、偏見を形にすること」だという。ここでいう“偏見”とは、視聴者が無意識に抱くイメージのことだ。
「この人はこういう部屋に住んでいそうだ、こういうデスクを使っていそうだ――そういう無意識の先入観をうまく利用して人物像を補強する。誰しもどんなものに対しても先入観はあるもので、それを逆手に取って表現するのが美術です。視聴者に作品の登場人物のイメージをインプットしてもらうための要素なんです」。
宇崎の自宅の部屋の端には、昔MMAをやっていたと感じさせるサンドバッグや器具が残されている。「宇崎は落ちこぼれでもあるので、部屋にも司法試験の勉強を必死にやったという痕跡を作りました」と野々垣氏。過去と現在の同居。それがにじみ出る空間になっている。
