“動き”が生む構造のリアル——どこから見ても画になるために

雨宮氏が特にこの『ニュースゲート』のセットで意識したのは、“人の動き”だ。「報道って、とにかく人がよく動くんです。誰かが取材から戻ってきて、誰かがスタジオに入っていく。その慌ただしさが、空間の構造そのものに現れているんです」。
その言葉どおり、スタジオから編集スペース、記者たちの作業エリアまでがワンカットでつながる構成は、まさに“動線”を意識した設計の表れ。さらに、阿部寛演じるキャスター・進藤壮一の個室や、サブ(副調整室)を2階に配置し、階段を使った“縦の動き”も組み込まれている。

こうした設計は、ドラマで描かれる報道の臨場感を支える一方で、「どこから見ても画になる空間」にもつながっている。「バラエティの中で報道っぽいセットが出てくることはありますが、ここまで報道を主軸にしたセットをドラマで作るのは初めてに近いんじゃないでしょうか」と雨宮氏は語る。

通常のニュース番組では、キャスターの背後が整っていれば十分という考え方もある。しかし今回は、2階から見下ろすようなカットや、空間全体を活かす演出も想定されている。そのため、普段はカメラに映らない天井裏の配線まで丁寧に仕上げられた。
「実際には天井にケーブルがたくさん走っていて、フタはしないのが通常。ですが、映ったときに汚く見えないように塞いだり、ワイヤーも銀ではなく白にしたり。“画としての美しさ”もすごく意識しました」。
人が動くことで映し出されるリアルな日常と、どこを切り取ってもフィクションとして成立する完成度。その両立にこそ、今回のセットづくりの真価がある。
