報道のリアルと美術の緻密なせめぎ合い

日曜劇場『キャスター』より

雨宮氏は実際の報道現場の“生”の雰囲気も大切にした。スタジオの奥に位置する報道局は、2階建ての構造を採用。中心に据えられた円形テーブルは、番組スタッフに扮する出演者たちが放送前の打ち合わせで自然と集まる場所としても機能する。

「実際の報道局を見学した際、皆さん部屋の端にあるデスクで打ち合わせをしていました。ですが、そこから各自のセクションに散ることで始まるので、印象に残る場所を作りたいという思いからあえて円形に。既製品ではなく、大道具さんに作ってもらいました」。

天井には、中央にモニターを吊るための円形トラス(構造骨組の一種)もあり、現場感と美術性の両立を図った設計だ。単に壁にモニターを並べるだけでは“動き”が出ないことも1つの理由だろう。

報道局からスタジオが見えるよう、大きく開かれた窓も印象的だ。「最初はここまで開ける予定ではなかったんですが見せたいという話になって。だから1階も2階もガッツリ抜いたんです」。

普段のテレビ番組では、カメラの後ろにいるアシスタントディレクター(AD)らスタッフが画面に映り込むことはほぼない。しかし、本作ではスタジオに隣接する報道局をスタッフが行き来する様子や、スタジオの奥で紙の資料を手渡す動作が、番組のリアリティをさりげなく底上げしている。

スタジオセットと報道局のセットが面していることで、ただの背景ではなく、どちらから撮影しても印象に残る効果もある。

日曜劇場『キャスター』より