“妹も脱線事故の犠牲者” 兄の思い

“脱線事故さえなければ、妹の死もなかった” 直起さんが悲痛な思いを抱える一方で、JR西日本側の直起さんへの対応は、誠実とは言い難かった。2007年に国土交通省の事故調査委員会が報告書をまとめた際の説明会には、JRから案内状も来なかった。

その後、JR側の姿勢は変化したものの、“妹と婚約者が同じ場所にいられるように、事故現場に妹を偲ぶ花壇を設けてほしい”という、直起さんの願いは実現しなかった。


直起さんも、直接死亡した乗客106人と由起さんが、同列だとは考えていない。感情に折り合いをつけられるようにもなった。それでも、“妹も脱線事故の犠牲者だ” という思いが、心から消えることはない。

自死した由起さんの兄・荒川直起さん
「当時は(乗客の死者数)106という数字を見るのはすごくプレッシャーだったし、その表現を見たらちょっと悲しい部分はあるけど、自分の心の中で、人数をちゃんと計算してるんで。僕自身が思い続けているのが、一番大事だと思うんで」

直起さんは自らに言い聞かせるように、何度も胸に手をあてていた。