事故がなければ翌月に結婚… 「全てが事故当日で止まった」

2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故。快速電車が制限速度を大幅に超えるスピードでカーブに進入して脱線、マンションに激突した。乗客106人と運転士が死亡、乗客562人が負傷する大惨事となった。
手前の駅で約70mのオーバーランを起こした運転士が、過少申告を車掌に要請。その車掌と指令員の交信に気を取られるなどして、ブレーキ使用が遅れたことが事故の原因とされた。懲罰的な社員教育が行われるなどしていた、JR西日本の当時の企業体質が厳しく批判された。

そして、死亡した乗客106人に、由起さんの婚約者が含まれていた。夜勤明けで帰宅する際、普段乗る1本後の電車に乗った結果、帰らぬ人になった。
事故がなければ、2人は翌月に婚姻届を出す予定だった。打ちひしがれた妹の姿や言葉が、兄・直起さんの脳裏から離れない。

「記憶に残っているのは、最後まで部屋の中が、事故当日のまま。何も変えずに…。冷蔵庫の中にアイスクリームがあって、『こんなん食べんねや、甘いの嫌いやのに』『違う、それはあの子(婚約者)が食べたやつや』って。洗濯物も干しっぱなし。靴の並び方もそのまんま。全てが事故当日で止まってる」














