被災地での復旧工事の需要の高まりによって人手不足に拍車がかかる建設業界。2025年4月に2人の新入社員が入社した石川県珠洲市の建設会社を取材しました。

この春、飯田高校を卒業した石川県能登町出身の佐野柊仁さん。「入社する前は不安でいっぱいでしたけど、入ってからはすごくやりがいを感じている」

和歌山県出身で結婚を機に珠洲市に移住した矢野慶次さん「先輩にいろいろ教わりながら勉強させてもらっています」

2人が4月に入社したのは珠洲市に本社がある能登建設。能登を中心に県の内外で土木工事や地質調査等を手掛ける会社です。

入田明大専務「震災があって珠洲の建設会社である僕達が一番頑張らなければという使命感を持ってやっているので、これから先、若い2人にはいろんな困難があるかもしれませんが能登の復旧復興に精一杯頑張れるように育てていきたい」

手前から入田専務、矢野慶次さん、佐野さん、矢野好二社長




矢野好二社長「俺Attaに出るげんぞと、みんなに放送してもらわな(笑)」

新入社員に明るく声をかける矢野好二社長ですが、建設業界の人手不足は深刻な状況だと話します。その背景にあるのは度重なる震災による若者の人口流出。

矢野社長「現在に至っては避難をしている方が多くて、対象になる人がいないというのが現実ですね。高校へ行って依頼をしながら、誰か地元に残ってくれる方がいないのかと毎年のようにやっています」

ハローワーク輪島の求人情報ページには建設業者がずらりと並びます。震災と豪雨の二重災害からの復旧にむけた工事の需要が増えたことで、能登の建設業界の人手不足はさらに深刻化しています。



石川県内の建設業従事者は5万人前後で推移していて、災害の前後で労働力の供給量に大きな増減はありません。これに対して2024年度の石川県内の公共工事の発注金額は約3100億円。前年度のほぼ2倍です。

矢野社長「今、復旧で大手さんが24時間土砂を運搬しているとか、そういうところまできている。いま能越自動車道でがけ崩れを法面整形をしながら、法面工事をやるというところもありますけど、これは昔ながらの手作業でやっているというのが現実です。多くの人員がそこに必要とされている」



石川県珠洲市三崎町の耕作放棄地をグラウンドにする工事現場に新入社員二人の姿がありました。

前野貴昭部長「これが、バケツの位置・高さ・深さを全部自動で、今10センチ高いとか、5センチ深いとか、1センチ単位で全部出る」

能登建設では現場にICT技術を取り入れ、業務の効率化を図っています。こちらの現場で導入しているのは、GPS機能がついているショベルカーです。

前野部長「ICTで重機の後ろに2つついているのは、GPSを含めた世界全部の衛星測位を拾って重機の位置と向きを調べている」

本来なら3人で行う掘削の作業をオペレーターひとりで正確に行うことができる重機の導入。最新技術の導入は、人手不足が課題となる建設現場での作業効率化だけでなく、業界イメージの改善にもつながっています。

前野部長「土木工事・建設業は昔みたいに泥だらけ、土だらけではない。機械などは今の若い人は得意だと思うので、いろんな技術を取り入れて、自分たちも使って、若い子の方が今の技術をICTに向けては取り入れやすいのかなと思う。その面では期待している」

この春、飯田高校を卒業したばかりの佐野さん。就職の決め手となったのは地元へ貢献したいという強い思いでした。

佐野さん「奥能登地震が起きた際に、車で移動しているときや復旧に当たっているときに、能登建設の名前を自分の目で見て、自分も地元を自分で復旧できるような人間になりたいと思った」

度重なる災害によって人手不足に拍車がかかった建設業界。若い力が就職したきっかけもまた、災害でした。希望を胸に現場で学びを深めている二人。能登の復興と明るい未来に目を向けています。

矢野慶次さん「能登の復旧復興に向けて頑張りたいです」
佐野さん「地元を復旧することがこの会社の一番の目標。私にとっても地元が復旧することがモチベーション」

一日も早い復興に向け、人手不足に直面する能登の建設会社の挑戦は続きます。

矢野好二社長



矢野社長「当分は災害復旧をしなければいけないだろうし、能登人全員で災害復旧をしていかなければいけないだろうし。皆さん心が折れていると思いますが、こんな素晴らしい珠洲を守らんと誰が守ってくれるんやといったかんじで自分の故郷を大事にしていきたいと思っています」