地元ゆかりのアーティストや世界で活躍するトップアーティストが石川県金沢市に集結する「ガルガンチュア音楽祭」。
今年の見どころや、能登の復興を応援するステージの出演者などを取材しました。

29日、高らかに響き渡ったオープニングファンファーレ。
去年、「風と緑の楽都音楽祭」から名前を変えた「ガルガンチュア音楽祭」は、普段なかなか聴くことができない楽団なども来県することから、大勢の音楽ファンが心待ちにしてきたゴールデンウィークの恒例イベントです。

観覧客「1つの公演の値段が安いところが何公演もこの期間に行けるんで、GWは本当に他所の県に行かないで金沢市内のここら辺でずっといるんで毎年楽しみにしている」
「子ども向けのプログラムもあったりしてすごい家族連れでも楽しめるイベントで、地元でこういうのあるのすごい嬉しいと思う。」
「子どもが音楽が好きなので結構体を揺らしたりしてきょうも聴いてくれてました」
オープニングファンファーレを演奏した金沢龍谷高校吹奏楽部員「普段、定期演奏会とかだと1つの団体しか聴くことができないと思うんですけど、こういった音楽祭だとすごいいろんな団体が出ていらっしゃるので、ついでに見ようかなっていう風にいろんな団体の音楽を知ることができるのでとても良いと思います」

ガルガンチュア音楽祭実行委員会 表正人業務執行委員「今年は大阪・関西万博が開催されておりますので、テーマは万博にちなみまして『世界を繋ぐハーモニー』と世界の音楽を皆さんに楽しんでいただこうと思っております」

今年の音楽祭の各会場は、「パビリオン」と名付けられ、190の公演が予定されています。
パビリオンの一つ、今回初めて会場となるもてなしドーム地下広場は「NOTOパビリオン」と銘打ち、能登ゆかりの出演者によるステージや、能登のグルメなどが楽しめます。
ガルガンチュア音楽祭実行委員会 表正人業務執行委員「音楽の力でやっぱり復旧・復興を後押ししようと、能登の方々に寄り添っていこうと、こういう思いがありますんで、また音楽祭を通じて能登の方々に音楽のメッセージを届けて、元気に、勇気をもっていただければなと思っております」

NOTOパビリオンのステージに出演するメゾソプラノ歌手・仲谷響子さん。
輪島市内にあった自宅は能登半島地震で全壊し、現在は仮設住宅で暮らしています。

仲谷響子さん「目の前に商店があったんですけど、商店が1階がぺっちゃんこになっていて、もう今だいぶ周りなくなったんですけど、当時は唖然とか茫然っていう感じですね」

地震後、復興応援コンサートを県内外で開いてきた仲谷さん。

そのコンサートでは、必ず歌う曲があります。
「いのちの歌」です。
仲谷さん「輪島で合唱団教えてたんですけど、皆さんとこの曲を歌うってことがもうなくなっちゃったんで、またこれをみんなと輪島市の合唱団のみんなと、私が指揮して皆さんが歌ってっていうのをもう1回出来たらいいなと思っているんですけど、なかなかそれはなくって結局ずっと1人で歌ったまんま何かコンサートある度にこの曲ちょっと歌ってって感じになってますね」

後進の育成にも積極的に取り組む仲谷さん。
ガルガンチュア音楽祭に出演する児童合唱団の指導にも熱が入ります。

仲谷さん「自分が元気ない時も疲れてる時も子どもの前でやってると逆に元気をもらうというか、自分がしっかりしてないとすぐに子どもたちに分かってしまうので、自分を戒めるためにもなりますし、良い意味でお互いパワーを与え合ってる会になってます」

エンジェルコーラスの団員「教え方とかめっちゃ上手で分かりやすくて勉強になる」
「(仲谷先生の歌は)ホールとかでもとても響いててとてもキレイな歌声だと思う」

エンジェルコーラス 清水史津さん「日々の努力に支えられていることと、常に新しい学びをされていて、それに歌声が支えられているというところが素晴らしいと思います」

仲谷さんは地震を経験したことで、「歌に対する向き合い方が変わった」と話します。

仲谷さん「どんな風にこの音楽に人間の思いっていうのを入れて書いたかっていうのが分かるようになったというか、自分の生活とか人生にリンクして感じられるようになりましたね。歌にかけてきた勉強とか修練とか考え方というものが常に1個のステージで全部出せるように、それが伝わるように。それが伝わると聴いてくださった方も何かしら感じて元気になってくれるんじゃないかなと期待して歌っている」

NOTOパビリオンには、能登の風景を写した写真も展示されます。

撮影を担当するのは、地元・珠洲市で写真家として活動する松田咲香さん。

松田さんのスタジオ兼自宅は地震で全壊し、津波の被害も受けました。
撮りためていたデータは水没し、家の下敷きとなっていましたが、東京のIT企業の助けを借りてデータを復元。
今回のNOTOパビリオンでは、復元された震災前の能登の写真に加え、震災後の復興に向けて歩むふるさとの写真も展示されるということです。

松田咲香さん「崩れてしまったけど街を残したい、街の風景を残したいって思って、そこから半年くらい経ってからやっと少しずつ震災後の街の風景また残せるようになってきたなって思って」
街並みだけではなく、能登の人たちの日々の生活を写していきたいと話す松田さん。
住民が気軽に集まれる場所を提案し、交流するきっかけを作っています。

松田さんが設立の発起人となった珠洲市宝立町の「本町ステーション」には、松田さんの撮った写真が飾られています。

写真を見ながら松田さんと住民の会話が弾みます。

住民「発想と行動力がすごいと思う。まず、本町ステーションを立ち上げるって発想がまずないでしょ。普通」
「発信力もあるし、行動力あるから、それをとにかく石川県内だけじゃなくって、どこでも良いから来てちょうだいって所行って元気なの見せてほしい」
松田さん「話した内容から何かいろんな視点や気づきがあったりすると思うので、そういったものを大事に撮影はしたいなと思っていて、自分の視点だけじゃなくて、いろんな人の視点で自分の写真に反映していけると思っている」

地震から約1年4か月。
美しい能登の風景、そして、震災の記憶と復興への足音。
音楽祭を訪れる全国の人たちに松田さんは写真で、伝えます。

松田さん「まだ行ったことないけど行っていいのかなって思ってる方たちにもっと能登の元々あった魅力っていうのも伝えたいし、思い出してもらいたいし、見てもらいたい。あとは能登にまた来れるよっていうのを考えてもらえたらいいなと思っています」

写真で、そして音楽で、能登の復興への思いが響くガルガンチュア音楽祭は5月5日までの開催です。