今、人口減少など様々な要因から多くの現場で人手不足が社会課題となっていますが、AI=人工知能を活用して解決しようとする試みが進んでいます。AIが実現しつつある未来を取材しました。

AIが作る未来の一端が、三重県四日市市にある最先端の合成ゴム工場にありました。

記者
「こちらのプラント、実はとある世界初の取り組みに成功しているんです」

エネオスマテリアル四日市工場 生産本部 舘亮太さん
「こちらがプラントを制御するコントロールルームです」

しかし、制御システムのモニターの前は、なんと無人。

エネオスマテリアル四日市工場 生産本部 舘亮太さん
「AI制御を導入したことによって、自動で運転をしてくれます」

これまでは、廃熱の再利用量を調整するバルブなどを15分に一度操作するため、プラントでは24時間体制でモニターを監視する人が必要でした。

20個ほどのデータを読み取り、バルブを開ける度合いを瞬時に判断。熟練の職人技だったのですが、AI技術の発展と応用によって、職人技をAIが習得。世界で初めて、人がいなくても自動制御できるようになったのです。

エネオスマテリアル四日市工場 生産本部 舘亮太さん
「AI制御が最適な状態で運転を維持してくれているので、他の改善業務に時間を割くことができました」

そのうえ、およそ40%のエネルギーの使用量とCO2の排出量の削減を達成。無人制御を可能にした立て役者は、意外にも日本のAIロボティクスでした。

奈良先端大学で研究されているのは、“自分で練習して技術を覚えるAIロボット”。このハンカチを緑から赤の面へ裏返せ!という課題を与えます。

最初は手探り。しかし、赤色の面積が広がってくると、ロボットは自分自身を褒めます。自らを鼓舞して、さらに試行錯誤を繰り返し、コツをどんどん掴んでいきます。

およそ4時間で、自分で練習して技術をものにしました。

奈良先端科学技術大学院大学 松原崇充 教授
「人間や生物が、褒められて何かを覚える仕組みにすごく似ている。本当に人の代わりに働けるAIロボットをまず作る、実現する。それを目標に研究を行っています」

最先端のAIロボティクスを研究室から現実の工場へ。その架け橋となったのがこちらの企業です。

鹿子木執行役らは、AIロボットが集めたデータから、試行錯誤して問題を解決する技術と工場の状態のデータを見て、人が経験に基づいてバルブを操作する。この2つのデータを見て学び、判断する“考え方”には共通項があるとひらめきました。

横河電機株式会社 鹿子木宏明 執行役
「AIは今は仮想的な分野といいますか、コンピュータ上で華々しい例はいっぱいある。本物の何かを動かしてみたい、本物のプラントでAIを動かしてみたい」

研究機関と現場が知識と経験を持ち寄り、工場の現場への導入を実現。無人制御の工場は未来への第一歩だとします。

横河電機株式会社 鹿子木宏明 執行役
「少子化問題、後継者問題だったり、(AIが人の)お弟子さんになったり、後継者の人が育つまでAIが暫定的にプラントを動かす。そういうポジションにAIが来るのではないか」

人の仕事をサポートし、頼りになる仲間となる。AIによる仕事の変革はまだ始まったばかりです。