施設の高齢者もおしゃれをして、新たな交流を

一方、介護施設などに出向いてメイクやネイルなどの美容を施す「ケアビューティスト」を目指す人も増えています。
今回、介護美容のスクールに通う平澤彩さんに同行して、鎌倉市の介護施設「フローレンスケア鎌倉」でメイクの様子を見学しました。

メイクを施す相手は山田成子さん(93)です。
今まで薄化粧をずっとしていたという成子さんは「主人が長生きしましたんでね。しょうがなくて、そのくらいはやってたんですけどね」と笑いながら話します。
今回メイクを受けることについても、他の入居者から「どんなにきれいになるか楽しみー」と期待されていた様子でした。

化粧水や乳液を顔につけるとお肌がしっとりモチモチになったようで、その際「あったかいおててですねー」と平澤さんの手の感触をほめていました。
成子さんはまつ毛メイクをやったことがないということで、マスカラに初挑戦しました。

「本当にかわいらしい。お人形さんみたい!」と周りから歓声もあがりました。
最後に口紅とチークを塗ってピンクと紫の素敵な上品メイクが完成しました。
成子さんは「こんなにやってもらったのは結婚式以来です」と感激した様子でした。 

(左から)平澤彩さんとメイク後の山田成子さん

メイク時間は30分ほどでしたが、その間、成子さんとご主人のなれそめの話などで盛り上がり、笑い声が絶えない楽しい時間でした。
お二人のおしゃべりが本当に自然で、成子さんが明るく話す姿が印象的でした。
平澤さんによると、介護美容は美容施術が目的ではなくツールであって、会話をしながら相手と向き合うことが一番大切だということです。
また、耳の遠い人や失語症の人にはホワイトボードを使って会話するなど工夫しているそうです。

平澤彩さん
「あまり変わらない繰り返しの日常の中での『一大イベント』的な感じでワクワクしていただきたいなというのはもちろんあるんですけれども『ただ綺麗になればいい』ではなくて、会話の先に綺麗になった自分がいるというところで満足していただきたいし、ネイルでも皆さんでやると、今まで話したことなかったご利用者様同士でも『見てみて』って言ったら『あなたその色いいわね』とかっていうのがもう当たり前のように自然にポンポン出てきて、そういうところが交流につながったりとか『一人じゃないんだ』とかにつながっていくといいのかなと思いますね」

平澤彩さん

平澤さんは、メイクのほかネイルアートや音楽活動もしていて「いくつになっても今まで通り、当たり前に美容を楽しめる、そんな世の中を作っていきたい」と話していました。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)