「ガソリンよりお米」の声も

藤森祥平キャスター:
石破総理大臣は5月22日から補助金という形でガソリン価格の10円の引き下げを決めています。一方、野党側からは補助金ではなく減税、25.1円の暫定税率の廃止を求めています。
小川彩佳キャスター:
補助金だと一時的ですし、野党からは選挙をにらんだ動きなのではないかという指摘も出ています。
東京大学 斎藤幸平准教授:
ガソリンに対する税金の国際比較では、日本はかなり安いです。

<ガソリンに対する税負担率>
▼日本42.6%、▼イギリス52.4%、▼フランス53.0%、▼ドイツ53.9%
今、ドイツに住んでいて、1リットル250円ぐらいするので日本は安いですね。気候変動の時代に税金を安くして、ガソリンをガンガン使うことを援助するような政策をやるべきかというと、むしろ暫定税率を炭素税みたいに恒久的なものにして、税率を上げていくぐらいの議論をすべきじゃないでしょうか。
藤森キャスター:
ただ、今は特に車を定期的に使ったり、地方で遠くに行く手段が車しかなかったりという方も多くいらっしゃるから、10円の引き下げは大きいと思います。
東京大学 斎藤幸平准教授:
逆に言えば、これは地方を喜ばせるためのバラマキによる小手先のポピュリズムと言われても仕方がない。本来であれば、電気自動車などに変えていくチャンスだと思います。

藤森キャスター:
物価高対策としてガソリン価格の引き下げを行うということです。
ただ、これまで給付金の声、減税しようという声も上がりましたけど、断念するということになりました。
こうしたことを踏まえて街の皆さんに聞いてみると、「ガソリンよりお米の方が助かる」「様々な人が恩恵を受けられる政策がいい」という声が上がっています。この方は、ひょっとしたら車を運転しない方なのかもしれません。
小川キャスター:
物価高対策ということを考えると、ガソリン価格引き下げでどれだけ実感が得られるのか疑問に思うところがありますね。

東京大学 斎藤幸平准教授:
今の状況で問題なのは給料が低く、あまりにも手取りが低いことです。日本の雰囲気としては、とにかく減税をして、手取りを増やす、消費税を減らすなどといった議論にもなっています。短期的にはそうかもしれないけれど、長期的にはずっと日本は安い賃金で労働者たちをこき使って、企業は余ったお金を研究・開発じゃなくて、株や投資に回して官製相場でどんどん株高を煽ってきた。そのツケが円安なんかに出てきてるわけですよね。
そういう中で、また新しい減税ポピュリズムで税収を減らすようなやり方は、長期的に見て持続可能ではない。もっと根本的な産業転換の議論を併せてしてほしいと思います。
小川キャスター:
物価高が厳しいという実情はあると思います。どういった対策が望ましいとお考えですか?
東京大学 斎藤幸平准教授:
電気代の補助金、ガソリン補助みたいなものは、やっぱりバラマキの一環になってしまう。長期での産業転換というものになかなか繋がらない。エネルギー自給、電気自動車などの話も併せてやってほしいと思います。
インフレというのは実質賃金が上がっていれば、問題がない。便乗値上げをチェックしたり、新しいものへの投資をしていったりすることが基本的な戦略になっていくのではないかと思います。