SDGsについて考えるシリーズ。資料や冊子など印刷物をつくる際に廃棄されてしまう紙にユニークなアイデアとデザインを加え、新たな商品を生み出すプロジェクトがあります。

光沢感のあるサバの切り身に、沖縄県民のソウルフード、ポークたまごおにぎり。皮をむくと…”そんなバナナ―!”

これらはすべて、廃棄される紙からできた文房具。シリーズ名は「kamitopia(カミトピア)。「紙」と「ユートピア」を組み合わせた造語で、紙の理想郷という意味が込められています。

プロジェクトリーダー 国場博史さん
「もったいないなとか、これ何か利用できないかなということで、企画担当の女性社員に『これなんかできない?』と聞いたら、今若い女性のあいだで文具が流行っているということで」「できそうだなと思ったんで、良いきっかけでスタートしました」

手がけているのは沖縄高速印刷。部署を超えた有志6人が、業務の合間をぬって企画・製造しています。月2~3回会議を開き、進捗の報告や試作品のアイデアを出し合います。

「すぐ作れるんじゃないですか?」「若い人には新鮮だと思う」
「これをトレぺ(=半透明紙)にするといいのかな」

続々と出てくる試作品。捨てられるはずだった紙に、新たな命が吹き込まれていきます。

「これが余り紙で廃棄・リサイクルされます」

資料や冊子など印刷物を作る際に廃棄されてしまう紙。沖縄高速印刷では年間およそ26トン排出されていて、リサイクルに回せる紙もあれば、そうでない紙も…。

kamitopiaの商品のほとんどは、こうしたリサイクルに回せない紙を中心に制作されています。

プロジェクトリーダー 国場博史さん
「リサイクルが年間25トンで、廃棄が年間1トン出していたのですが、kamitopiaを3年間やって、廃棄量も半分ぐらいに抑えられていて。リサイクルに出さず10 %ぐらいは商品化できてる形ですね」

kamitopiaの商品はどのようにできているのか。作業場にお邪魔すると……"

製造担当 太田稲美さん
(Q:これ全部手作業でやっているんですか)
「そうですね。こういう感じで…出来上がりですね」

遊び心あふれる文房具。機械では生み出せない手仕事の温もりが、一点ものとしての価値を高めます。

なかには、廃棄紙だからこその希少な価値を持つ商品もありました。

製造担当 太田稲美さん
「こちらは『ミューズコットン』といって、ザラザラしてボコボコしてる特殊な紙で、表紙などに使われるような紙です」「このミューズコットンがなくなるとこのザラザラの紙のミントチョコはもうないという感じになりますね」

ユニークなアイデアとデザインで価値をつけ再利用する。沖縄高速印刷・kamitopiaの取り組みは、SDGsの目標につながっています。

商品は主にECサイトで販売されていて、購入したお客さんからは喜びの声が寄せられ、メンバーの大きな励みになっています。

デザイン担当 仲村佳与子さん
「作った甲斐がありますね」「やはりモチベーションが上がって、また次は何おw作ろうかなという気持ちになりますね」

プロジェクトリーダー 国場博史さん
「紙そのものを何か使えないかということで考えていけば無駄がなくなるということで、もうあるものをどうにか利用しようと、工夫しようということでやっているので」「紙、質感っていうのも感じて欲しいというのがありますね。ほとんどが特殊用紙を使っているので。その辺も楽しんでもらえたらいいかなと思います」

廃棄されるはずだった紙を、夢中にさせる文房具に。人にも地球にもやさしい商品を、kamitopiaは生み出しています。

【記者MEMO】
kamitopiaはECサイトでの販売がメインとのことでしたが、この週末は沖縄市のプラザハウスで行われるイベントに出店するということです。個性豊かな文具に出会える機会ですので、訪れてみてはいかがでしょうか。