「あの女性に、もう一度会いたい」俳優の杉良太郎さん(80)が55年前、長崎で出会った被爆者の女性を探している。先月発行された日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の機関紙に“探し人”の手紙を掲載、23日には記憶を頼りに長崎の町を歩き回り、女性につながる手がかりを探した。

「結婚できないんです」 杉さんの記憶に刻まれた女性の言葉

1970年5月、当時25歳の杉さんは、映画『花の特攻隊 あゝ戦友よ』で主人公の特攻兵を演じた縁で、広島・長崎を訪れた。映画の宣伝を兼ねた訪問だった。

長崎では大浦天主堂を訪れ、近くの小料理屋に4~5人で昼食をとるため立ち寄った。急な階段を下りた所にあったその店は、女性1人で切り盛りしていた。ずば抜けてキレイな女性だったという。

「ご結婚されていますか?」杉さんが何気なく尋ねると、女性は黙っていた。

料理を出したところで女性は杉さんを隣の部屋に呼んだ。着物の裾をすっとめくってみせた女性の足には、ひどいケロイドがあった。

「これだから結婚できません」ーそう言った女性に、杉さんは何も言えなかった。ただ席に戻り、その場にいた人にも何も話さなかった。

杉良太郎さん:
「こんなこと言っちゃいけないんだけど、酷いケロイドだった。うんもすんも言えなかった。そのまま55年来ちゃったんです」