芝居の速度も考え方も、映像はまるで別世界だった

日曜劇場『キャスター』より、月城かなと
日曜劇場『キャスター』より、月城かなと

撮影現場では、芝居のテンションと“報道中の冷静さ”とのギャップに戸惑いながらも、少しずつ手応えを掴んでいった。進藤たちが熱く議論を交わす横で、テレビ局のアナウンサーである小池として冷静に原稿に目を落とす。その場の熱量に飲まれず、“いま自分はニュース番組の中にいる”という空気感を作る。そんな静かな存在感が求められるのだ。「最初は、その熱の中に入りたくなってしまうんです。でも小池はそうではない。距離を取ることがむしろ役のリアルさにつながるんだと気づきました」。

ニュースの背景でどう見えるか、どこまで感情を出していいのか。舞台では感じたことを表現していた月城にとって、映像の世界は“引く芝居”が求められる場所でもあった。「カメラに撮られながら、その様子をさらに別のカメラが撮っている」。本作の特徴でもある二重構造の演出に対応するため、表情の微細な変化にも神経を研ぎ澄ませた。

舞台と映像、演技におけるアプローチの違いにも改めて気づかされた。舞台では「お客様と同じ時間軸で感情を共有する」ことが重要だったというが、報道や映像の世界では、「いかに速く、的確に伝えるか」が肝となる。

芝居のテンポもまったく異なり、「これまではその役に入る前に1か月ほど練習をしてから本番に臨める環境だったので、付いていくのに必死でした」と苦笑する。しかし同時に、「このスピード感こそが、『キャスター』という作品の報道の臨場感やリアリティにつながっている」と感じた瞬間もあった。