広島県大崎上島のカキ養殖会社が、環境基準の国際認証を受けて、フランス式の新しい養殖法を取り入れています。広島の名産を世界に広めようという取り組みを取材しました。

瀬戸内海に浮かぶ大崎上島です。

水面に並んでいる奇妙な列…。カキが入ったカゴです。

塩田跡地をつかった10万平方メートルの広大な池で、カキや車エビなどを養殖しているファームスズキです。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「閉鎖的な海域、池なんで、水の管理が非常にしやすいので安全性の高いカキを作っています」

安全性の高いカキは海外でも認められました。2022年、シンガポールに向けて初めて生牡蠣を出荷しました。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「嬉しいです、あとは皆さん喜んでくれたら何よりです」

シンガポールは人口600万人の巨大マーケット。食材のほとんどを輸入に頼っているため衛生検査が厳しく、ファームスズキは広島県で初めてクリアしました。

ファームスズキ・鈴木隆社長(当時)
「世界的にも一番衛生基準が厳しい国なので、そこで通用する牡蠣を出すことは大きな一歩」

それから3年、海外の販路拡大に向け動きを加速させています。

養殖作業池に浮いていた奇妙な列は2年前に導入したフランス式の養殖マシン「シーデューサー」です。カゴを上げ下げして、カキを海水から出したり入れたりします。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「カキは空気中にあげることによって、餌が食べないでぐっと殻をふさいで殻をぐっとふさぐことによって中の身を守ろうとする。その反動で今度水に入ったときに、一気にそこで餌を食べようとするこのカキの習性を上手に利用した養殖のシステムですね。普通の海だと1日2回、満潮と干潮で1日2回までしかできないんですけど、この機械は1日最大50回カキを上げたり下げたりすることによってカキの品質と成長のスピードの両方を上げる事が出来る機械ですね」

ここで、ポイントとなるのが塩田跡地での養殖法です。年に一回、池の水を抜いてバクテリアをまき、カキの餌となる植物性プランクトンを育てます。池の水深が浅いため、太陽光を受け植物性プランクトンは豊富です。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「ストレスを与えて我慢させてその反動で水に入ったときにグット餌を食べさせる。言ってみたら筋トレをしながらプロテインを飲む、筋トレをしてプロテインを飲む、もうこの繰り返し、池の中にいるときはプロテイン、上に上がってるときが筋トレしてる状態」

この新しい養殖法で鍛えられたカキは、去年夏の猛暑も乗り切ったそうです。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「一定時間、空気に触れさせることによって殻と貝柱を鍛えてあげることによって、夏場にも強いカキができるてことは、これを使ってみてわかりました」

カキの成長が早いため、収穫量も飛躍的に伸びたといいます。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「マシンが入る前までは1年に1回、大体半年から10ヶ月ぐらいでカキが出来上がってたんですけど、今このマシンを入れることによって1年ちょうど2回ですね、2回転できることになったんで、言ってみたら二毛作」

海外で人気なのは生のまま食べやすい小粒なカキ。1年を通して安定した品質で提供できます。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「これが今年の生まれた子供たちなんですけど、ここで6ミリぐらいまで育てた後にあの池にあるシーデューサーで60グラムぐらいまでを養殖してます、養殖し終わったものが、こっちのプール入ってここで浄化します。地下海水で約1週間、ここで浄化をして、その後に屋内の紫外線殺菌の水槽で3日間浄化をして、それから初めて出荷できる」

紫外線殺菌は広島県が開発した技術。フランスの技術とコラボした養殖法です。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「その2つを上手に組み合わせて、海外で通用するカキを作るっていうのが僕らの仕事」

さらに海外販売を後押ししてくれるのが、魚をデザインしたエコラベル。環境にやさしい養殖を証明するASCの国際認証を広島県で初めて取得しました。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「この数年、海外販売する中で海外ではASCはだいぶスタンダードになりつつあって、会社としてASCを認証してるっていうのはそれなりに信用力にも繋がりますし心強いですよね」

淵上沙紀アナウンサー(23年3/22)
「こちらの出荷施設からわずか30メートルで通関、そのすぐ向こう側が飛行場となっています」

おととし、広島空港に生カキ用の水槽が設置されました。出国ギリギリに水揚げし新鮮なまま海外に届けようというのです。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「梱包から飛行機までは日本で一番早いんじゃないですかね」

そして、今回新たに取り組んだのが・・・。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「生きたカキを安定して海外に出そうと思うと、水槽を現地に設置するが一番望ましい」

去年7月、バンコクの市場に初めて水槽を設置。先月には、台湾の台北にも設置しました。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「水槽があることによって、ちょっと大げさだけど、台北の水槽にはファームスズキのカキがあるのでいつでも販売ができる体制が出来上がった」

台北の水槽には来週火曜日に初出荷されます。

ファームスズキ・鈴木隆社長
「台北経由で東南アジアには持って行けますので、どんどん経済成長著しい東南アジアのマーケットに生きたカキが常に供給できるのは大きな強みだと思いますね」

(スタジオ)
塩田で育ったカキはナマで食べるとよくわかる。海外でもカキを食べる人が増えていてマーケットは広がっている。国内販売が中心だが、海外に向けまずは距離も近いアジアから広げていきたい。