福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は、創業100年を超える喜多方市の「せんべい店」です。「手間と時間を大切に」機械化が進むなか、伝統の手焼きを守る女性店主にスポットをあてます。

1枚1枚、職人が丁寧に焼き上げます。工場には香ばしい香りが広がります。喜多方市の名物「たまりせんべい」です。

1900年創業の山中煎餅本舗。

切り盛りするのは、6代目の渡部ひとみさんです。
--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「香ばしく焼き上がっていますね。いつも通りの味です。」

こだわりは、炭火を使った手焼きです。機械化が進むなか市内で唯一、この製法を守り続けています。

--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「一番大きな違いは炭火の香ばしさですね。ほどよく水分を残すのが、機械ではなかなかできないことです。」

サクッと歯切れの良い食感。飾り気はありませんが、香ばしさの中にコメ本来の味が広がります。

小さいころから、店で職人の姿を見て育ってきた渡部さん。父・慎一さんが亡くなり、14年前に跡を継ぎました。

--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「小さいときから一番兄弟のなかで煎餅に興味を持っていたのは私だったなって感じで。私、煎餅が好きなんだと改めて知って、好きだしやってみようかなって。」

結婚した後は千葉県に住んでいましたが、家業を守るため、ふるさとに戻りました。しかし、経営は、厳しい状況だったと言います。これまで薄利多売が当たり前だった、せんべい店。機械による大量生産が進むなか、手焼きの山中煎餅本舗も、安い価格設定で他店に対抗してきました。

--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「価格競争に加わってしまったので父が。手焼きなのに安い。割に合わないし、ボランティアみたいな感じでやっていた。」

それでも渡部さんは、「伝統の手焼き」をやめることは、考えませんでした。

--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「うちがやめてしまったら、この焼き方も途絶えてしまうので、これだけ貴重な煎餅焼きなんだというのを知って、これは続けていかなくてはというのはすごく思いましたね。」

「手焼きの美味しさを知ってもらう」その原点に返り、安かった価格を見直し、品質を高めることで、他店との差別化を図りました。

--渡部ひとみさん(山中煎餅本舗6代目)「機械で焼いたせんべいと同じくらいの価格だと、手焼きを分かってもらいづらいなぁと。手間と時間をかけて焼いているものを、理解してもらってせんべいの価格は高いと分かって買ってもらいたい。」

さらに、売り方にもこだわりました。