地域コミュニティーの再構築への課題
震災から時間が経過するにつれ、新しい住民が増え、震災の記憶が薄れていく。これは単に時間の経過だけでなく、都市開発のあり方にも関係していると姜さんは指摘する。

「問題はそのコミュニティーや地域の開発の仕方を今後どうしていくのか。人が入れ替わるような形での、マンションとか集合住宅だけでいいのかどうか。景観や都市開発全体をデザインしながら、コミュニティーをどうやって新しく残していくのか。これは総合的な、色んな力を組み合わせていかなきゃいけないと思います」
この課題は被災地だけでなく、日本全国の多くの地域が抱える問題でもある。しかし、被災によって住まいが変わったことで、より顕著になった面もあるという。
「懐かしい未来」を目指して
熊本の今後について、姜さんは「懐かしい未来」という言葉を用いて説明する。
「熊本の懐かしさというのは、未来に投影されるような町や村の総合的なプランを、行政と経済界、あるいは地域社会、コミュニティー、こういうものが一体となってプランニングしていくということです。大きなデザインがないと個別的な努力では限界があると思います」
この9年間で熊本は大きく変化したと姜さんは評価する。その変化の中で重要なのは、「他力と自力を組み合わせる」ことだという。
「これまで自力だけでやればいいというんじゃなくて、でも他力だけでもだめで。外側から人が来る。その人たちが落ち着いてもらう。そしてその人たちと掛け合わせながら、総合的な形での地域社会のプランを練っていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています」