おわりに:熊本の経験から学ぶ

熊本の復興過程は、日本の他の地域にとっても貴重な学びとなる。高齢化や人口減少、コミュニティーの希薄化といった問題は、多くの地域が直面している課題だ。震災という困難を乗り越えようとする熊本の取り組みは、これらの課題に対する一つの解答を示しているといえるだろう。

姜さんの言葉を借りれば、「他力と自力を組み合わせる」ことが、地域の持続可能な発展には不可欠だ。外部からの支援と地域の自助努力、新しい住民と、もとからの住民、そして過去の記憶と未来への展望。これらを巧みに組み合わせることで、真の意味での復興、そして新たな地域社会の創造が可能になるのではないだろうか。

熊本の挑戦は、まだ道半ばである。しかし、その歩みは確実に前進している。今後も熊本の取り組みに注目し、そこから得られる教訓を、日本全体の地域づくりに活かしていくことが重要だろう。

【姜尚中さん】
1950年生まれ 熊本市出身の政治学者で、東京大学名誉教授で熊本県立劇場館長を務める