「苦手なシイタケは抜いて」彼岸に供える母の味

3月、河添さん夫婦は彼岸を前に買い物へ出かけました。

登志子さん「明日からお彼岸になるので、娘の好物だった肉飯を作ってあげようかと」

登志子さん「これ、馬肉、ちょっと足りないんですよ」
精肉店の人「新しく切りましょう」
登志子さん「なら、2キロくらい切ってもらって」

肉飯は、登志子さんが母親から受け継いだ味です。馬肉とごぼうに砂糖・白だし・醤油で味付けしてじっくり1時間煮込みます。

あまり母親の手料理に感想を言うことはなかった娘の由実さんが、この肉飯には手放しで褒めてくれました。

登志子さん「母が作っていたレシピより砂糖を控えて、娘はシイタケがあまり好きではなかったから、シイタケを抜いて」

できあがった肉飯を、仏壇に供えました。

登志子さん「ご飯だよ」

――由実さん、何と言ってますかね?
登志子さん「『もうちょっとマメに作らんかい』って言われそうな気がする」

あの日から9年。復興が進む益城町の風景は大きく変わりましたが、河添さん夫婦には変わらない強い思いがあります。

登志子さん「由実の犠牲が無にならないようにやっていって欲しいと思います。私たちは由実のことをずっと忘れずに教訓にしていきたい」