高知県黒潮町の「大方あかつき館」で町出身の小説家上林暁(かんばやし・あかつき)の小説をギターの音色にのせて朗読するイベントが開かれました。

上林暁は黒潮町下田の口に生まれ東京大学英文科を卒業後出版社での勤務を経て小説家になりました。妻の死、自身の大病などの中でも私小説と短編一筋に歩み続け第一回川端康成文学賞を受賞。「七度生まれ変わるとも文学をやりたい」という言葉を残した、昭和を代表する小説家の一人です。

その作品の魅力をより多くの人に知ってもらおうと、12日、黒潮町の「大方あかつき館」で、上林暁の作品の朗読演奏会が開かれました。

朗読を行うのは俳優の西地修哉(にしぢしゅうや)さん。

そして、クラシックギターを演奏するのは国内、海外でクラシック音楽の魅力を伝えている松田弦(まつだげん)さんです。

さらに、脚本と演出は過去に四万十市を舞台にした映画をてがけた、映画監督の松田大佑(まつだだいすけ)さん。

3人とも、黒潮町の出身です。

(映画監督 松田大佑さん)
「上林暁の世界を自由に持ってほしいし、好きになっていただけたらこのうえないです」

町出身の3人による朗読演奏会。大勢の人が集まり、ホールは一杯になりました。会では上林暁以外の作品も披露され、中には、県の児童詩集「やまもも」に掲載された作品も。

「実は図書館で『やまもも』に西地修哉さんが書いた詩を見つけました。ぜひ朗読をお願いします」

(西地修哉さん)
『「ホエールウォッチング」入野小4年、おれ(自分)。『クジラがおるぞーという大きな声が無線から聞こえてきた』」

(松田弦さん)
「なんか今のだけあんまり上手じゃなかったような気がする、気のせいかな(笑)」

■「過ぎゆきの歌」上林暁
私の故郷でも今はあまり肺病を病まなくなったが、一昔前までは肺病みといえば極度に嫌って恐れて、人里から離れた丘の上や山陰などに小屋建てをして隔離したものだった。

目に泪ためて 眠れる妻の顔 夜更の月に 見つつせつなし

(観客は)
「すごくいま感動で胸がいっぱいです。良かったです」
「読むのと朗読で聞くのとではぜんぜん違う味わいがありまして、映画を見ているような、そういった世界観に引き込まれました」

見に来てくれたお客さんとの距離が近いのも地元ならでは。小学校時代の(やまもも掲載)恩師の姿もありました。

(俳優 西地修哉さん)
「やっぱりホームやなって思いました。みんな温かかったです。(地元の)若い人たちを巻き込んでいろいろやっていきたいなと思います」

(クラシックギタリスト 松田弦さん)
「一体感というのが東京とかに比べると生まれたんじゃないかなと勝手に思っています」

「大方あかつき館」は今後も上林暁の作品の魅力を広く知ってもらえるイベントを続けたいとしていて、映画制作にもつなげていきたい考えです。