想定外の出来事で・・・陛下の心遣いが

拝礼して花を供えたあとのことだった。陛下が足を止めて、何かを確認する一幕が。陛下の手は、遺族のほうを指していた。様子を見ていた私には、雅子さまや先導者に、「待っている遺族にお声かけしたい」という趣旨の話をしているように見受けられた。

当初の予定では、そこで遺族とは一旦離れて村長から説明を受けるという段取りだったが、両陛下のご様子を見た村長が機転を利かせた。遺族に「こっちへどうぞ」と手招きしたのだ。そうして、遺族も「ご説明の場」に急きょ立ち会えることになった。

「全国硫黄島島民3世の会」会長 西村怜馬さん
「驚きました。両陛下と村長のはからいで。両陛下と1mくらいの距離で、公園ご説明の場に立ち会えたんです。先祖の名前が刻まれた大切な場所ですから。感慨深いものがありました」

さらに、雨風が強まる中、陛下からこんな声をかけられたという。

「全国硫黄島島民3世の会」会長 西村怜馬さん
「両陛下の前なので、私たちはカッパのフードをかぶらず脱いでたんですね。そしたら、陛下のほうから『雨、大丈夫ですか。どうかカッパのフードをかぶられてください』と」

遺族のことを思いやる、陛下らしい心遣いが垣間見えた。

日程の最後、両陛下は遺族らと懇談。両陛下は懇談者の目をじっと見つめ、熱心に耳を傾けられた。それぞれの、後世に記憶をつないでいく活動について、陛下は「何人くらいでどんなことを?」雅子さまは「全国各地から集まっているのですか?」などと、強い関心を示して次々に質問されていたのが印象的だった。

陛下は懇談を終えたあと、側近にこう述べられた。

陛下
「戦争を体験した世代から知らない世代に伝えられていくことが大切だと、(懇談を通して)改めて感じました」

西村さんは「両陛下とお話することなんてないから緊張しました」としつつ、こう振り返る。

「全国硫黄島島民3世の会」会長 西村怜馬さん
「こうして硫黄島に来てくださったり、語り継ぐ活動の話を直接聞いていただいて、忘れられない一日になりました」
「子や孫の世代が、硫黄島のことを後世に伝えていく原動力になったらいいな」