体のあらゆる細胞に変化することができるiPS細胞。これを使った新しい治療法について、大阪大学発のベンチャー企業が厚生労働省に承認を求める申請を行いました。未来を変える世界初の治療法になると期待されています。

先週、大阪万博の会場で公開されたのは、iPS細胞から作られた小さな心臓。5センチほどの大きさで、およそ2億個のiPS細胞から作られた心筋細胞が使われています。

大阪大学 澤芳樹 特任教授
「これを見つめてもらうことで科学の力を伝えたい。未来が変わるんだと」

この「iPS心臓」を作った大阪大学の澤芳樹特任教授らのベンチャー企業「クオリプス」はきのう、「心筋細胞シート」について、厚労省に製造・販売の承認申請を行ったと発表しました。

大阪大学 澤芳樹 特任教授(去年8月)
「iPS細胞から作った心筋細胞をシート状にしたもの」

心臓のようにピクピクと動いている薄いシート。このシートを重い心臓病の「虚血性心筋症」の患者の心臓に貼り付けることで、心臓の機能が回復することが期待されています。

澤教授らのグループは2023年までに8人の患者にシートを移植する臨床試験を行い、いずれも経過は良好だということです。

『心筋細胞シート』の臨床試験を受けた男性(50代・去年8月) 
「(臨床試験を受けて)すごく体が楽になって、やって良かったと実感が湧いた」

この男性は「最終的には心臓移植をするしかない」と医師に言われていましたが、臨床試験に手を挙げ、趣味のゴルフができるまで回復したといいます。

「クオリプス」によりますと、今後、厚労省に承認されれば、iPS細胞を使った世界初の治療法になるとみられるということです。

ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授がヒトのiPS細胞の作成を発表してから18年。今では目や脊髄などでも臨床研究が進んでいて、いよいよ実用化が見えてきました。

大阪大学 澤芳樹 特任教授
「出来るだけ早く承認されて、一日も早く保険診療で患者に届けることを期待している」