「メディアの前とは違う」…実際に会ったトランプ大統領の印象は
Q米中対立の行方をどう見ていますか?
金杉大使
それは多分誰もわからないと思うので、大事なことはアンテナを高くして、情報を集めて、一つ一つ物事を前に進めていくっていうことじゃないかなと思っています。
Q大使はトランプ大統領に会ったことはありますか?
金杉大使
アジア大洋州局長をしている時に何回か、安倍総理とトランプ大統領の会談に同席して、お会いしたことがあります。握手もしました。
Qどんな方でしたか?
金杉大使
実際の首脳会談のやりとりは、割合と温かみがあるやりとりで、メディアの前での非常に厳しい発言とは違ってすごく噛み合った議論が行われていたのが印象に残っています。
Q中国の外交官はトランプ大統領にどんな印象を持っていますか?
金杉大使
中国政府の人から聞くことはないですが、中国の学者さんと話をしていると「難しい相手であるのは事実だ」と。ただ「トランプさんのやり方はトップが決めれば物事が動くということなので、いかにトランプ大統領に的確なことを打ち込んでアメリカと中国がディールできるようにするか。それが鍵だ」と思っているので、積み上げるよりはしっかりしたことをトランプ大統領にパッと打ち込むことが大事だと思っておられるようです。
Q上で話をすればいろんな物事が一気に動く可能性もあるってことですよね?
金杉大使
もちろんゼレンスキー大統領とトランプ大統領とのやり取りを見ていると、それなりの積み上げをしっかりした上で最後トップが決めるっていうことは変わらないと思いますけれども、トランプ大統領からすれば物事を決められるのは習近平国家主席だと思っているでしょうから、どこかの時点で米中首脳会談は行われるんじゃないかと思います。

Q王毅外相は全人代の記者会見で米中関係について対抗と対話、両方のメッセージがあった気がするんですが、 どうご覧になりましたか?
金杉大使
どの二国間関係でも、時に対立する部分と協力できる部分があると思うんですね。それは多分、日中関係でも同じで。ですから中国としてはアメリカとは折り合いをつける気持ちがあって、折り合いをつけるにあたってどの部分が協力できるのか、あるいはどの部分を先送りしながら解決策を見つけておくべきなのか。そのあたりをメッセージで送っているんじゃないかなと思いました。
(後半に続く。音声配信でお聞きになりたい方はポッドキャスト「北京発!中国取材の現場から」で)
聞き手
JNN北京支局長 立山芽以子
JNN北京支局カメラマン 室谷 陽太