後藤部長のリアルポリティクスです。
岸田総理が旧統一教会の問題で宗教法人法に基づく調査を実施するよう永岡文部科学大臣に指示しました。初の質問権を行使します。その一方で調査の際、どういった法令違反を根拠に解散命令請求の可否を決めるのかについて岸田総理の発言が一夜にして一変しました。その背景には何があるのか後藤部長が解説します。

ーー10月17日から国会で予算委員会が開かれていますが、旧統一教会問題について岸田総理が踏み込んだ発言をしていますね。

後藤政治部長:
旧統一教会に対して宗教法人法に基づく調査の実施を担当の永岡文部科学大臣に指示をしたということです。かなり思い切ったというか、これまでの岸田総理の答弁を聞いているとどちらかというと慎重な印象を持った。先週くらいから雰囲気が変わってきたなと思った。ただ調査の実施を指示したが、実際にその後の流れはかなり時間かかると思う。専門家との話し合いがあってどういった調査をしていくのか詰めの協議を行い、その先には重大な法令違反があるのかどうか、その認定作業が今後の焦点。そういった中で政府も速やかにと言っているが、一定の時間はかかると思う。


そして国会では政府がどういう姿勢で臨むかという点に注目が集まっているが、実は18日19日の委員会答弁を見ていると岸田総理の発言に修正やブレが見られる。
まずは18日の衆議院予算委員会でのやりとりをみていきましょう。

▼衆議院予算委員会でのやりとり(10月18日)
立憲民主党 長妻昭議員:

「解散請求はですね、要件の1つで法令違反ってあるんですね。その法令違反は刑事に限ると、刑事の確定判決が統一教会本体に出ていないから、旧統一教会本体に出ていないからできないんですと、これ解釈変えたんですか、総理」

岸田文雄総理:
「刑法等の実定法規の定める禁止規範、または命令違反に違反するものであるという考え方、これを踏襲している」

立憲民主党 長妻昭議員:
「禁止規定と命令違反というのは民法のですね、今おっしゃった不法行為ですね、組織的、これは入らないという理解ですね」

岸田文雄総理:
「おっしゃるように民法の不法行為、これは入らないという解釈です」


ーー政府が旧統一教会への解散命令請求を決める場合の根拠はどういったものがあるのかということのやりとりですね。

後藤政治部長:
そうです。調査結果で重大な法令違反があるという場合には、さらに次のステップの可能性として解散命令の請求まであるのですが、今のやりとりは法令違反というのはどういったものがあるのかという、よりテクニカルな話になっている。やり取りの中でも刑法とか民法という用語が飛び交っている。判断材料は刑法に限るのかどうかという野党議員の質問に対して岸田さんは「刑法等の禁止規範・命令違反に違反したもの」という考え方を示して、さらに民法の不法行為は入らないですよというのが18日のやり取りでした。


刑法というのは例えば傷害・暴行・詐欺罪などを規定している。私たちが一般に想定する犯罪の大半は、この刑法違反です。それに対して民法に基づく民事の裁判は刑事と違い名誉が棄損された、精神的苦痛を受けたなどの損害賠償名誉回復をしてくれという損害等の調整になる。民法の不法行為というのは多岐にわたるのですが、例えば一定の要件を満たせばネット上の個人あるいは組織への不当な非難中傷や、交通事故などが不法行為に該当します。ですから政府はどういった性質の法的違反を根拠にするんだというやり取りに対しての答えが18日の岸田さんの答弁でした。しかし19日は一転、トーンが変わりました。

岸田文雄総理(10月19日):
「個別事案、それぞれに応じて検討するべきであり、結果としてご指摘のように民法の不法行為も該当する、このように政府としては考え方、整理をさせていただきました」

ーー岸田総理の発言、一晩で大きく変わりましたね。