シリーズ・北陸新幹線開業10年。
県内へ来る観光客や東京へ向かう県民の足に変化はあったのか、「交通」に焦点を当てて検証します。まずは、空の便です。

かつては「ドル箱路線」とも呼ばれた小松空港の羽田便。

10年前、北陸新幹線開業後は利用者が減少し、それに伴う便数の減少で利便性が悪くなることが懸念されていました。
当時の全日空トップ・篠辺修社長「実際にどのくらいのお客様が乗って、搭乗率がどうなるかというのはこれからじっくり見ていきたいと思います。ただ、あまり一喜一憂するっていうことはしないように全体としてどういう状況になるか、つまり機材を小型化しました。逆に中型機・大型機を他にまわしてますから、トータルとして利益水準がどう維持されるのかといういろんな角度から検討したいと思っております」

こちらのグラフは、小松-羽田便の利用者数の推移を表したものです。
北陸新幹線が開業した2015年、小松空港の羽田便の利用者は、前の年からおよそ60万人減少しました。
しかし、その後も年間100万人を超える利用者を維持し続けていて、コロナ禍が明けてからも順調に回復傾向を見せています。

県企画振興部交通総合対策監室空港企画課 木本正成課長「開業直後はたくさん新幹線乗られる方が多かったのかなあと思います。ある程度、新幹線に乗っていただいた後、元々飛行機が便利な方とか、地理的に小松空港の方が近い方が飛行機に戻ったのかなとちょっと思っている」
2024年の敦賀延伸後は6月にかけて利用者の減少が見られたものの、夏以降は持ち直し、2025年1月の利用者数は前年比マイナス3・2%と持ち直しています。
県企画振興部交通総合対策監室空港企画課 木本正成課長「どうしても新幹線の方が圧倒的に輸送能力が高いので、もう新幹線と闘うっていう感じではなくて、一定数飛行機好きな方っておられるので、サポーターズクラブみたいな形で好きな方にもっと乗っていただくような取り組みをやっています」
新幹線開業から10年、空の便の利用者が一定数をキープしていることから飛行機と新幹線の共存が定着してきたとみられます。
飛行機利用者「早くチケットを買えば新幹線よりも安く乗れる」「目的地に着いた時の疲労度がやっぱり少ないので、それが理由で。あと、時間も早いので飛行機を使うことが多いです」「子供もまだ小さいので、乗り物に乗っていられる時間が限られていると思うとやっぱり飛行機の方が早くて良いかなと」
新幹線利用者「飛行機を選びたいなというところもあるんですけど、新幹線の方がリーズナブルに来られるっていうのはあります」「シンカリオン(アニメ)とか小さい頃に見たから、シンカリオンとかで新幹線が好きになりました」「格安の航空券を予約したんですけど、雪で飛ぶか危ないし、航空機の事故も多かったので、急遽キャンセルして新幹線に変えた」
元々、小松-羽田便はビジネス客の利用が多い路線でした。
それがコロナ禍で出張が減り、リモート会議が普及したことでさらにビジネス客の利用が減少しました。

一方、県によりますと、観光などでは飛行機を利用する人が近年は増加傾向にあるそうです。
県は新たな利用者の獲得とビジネス・観光両面からの利用促進のため、来年度の当初予算に羽田便の利用促進に関する新規事業を提案しています。
具体的には、
▼来県者数が増加しているヨーロッパの旅行会社に小松-羽田便を組み込んだ旅行商品を作ってもらう働きかけ

▼敦賀延伸に伴って減少したと見られている福井県や南加賀の利用者に対する地元の飲食店と連携したPR強化、飛行機の利用者にはその飲食店で使えるクーポン券の配布などを展開したいとしています。


空港と新幹線の駅どちらも持つ小松市民の方々は……
「使うとしたら飛行機。家が空港から近いので、利便性を考えて飛行機」「飛行機は早いから。マイルもあるし。そういう絡みかな」「新幹線でーす。飛行機難しい。飛行場行って、また電車に乗らなければならないし。新幹線だと駅行ってシャッて行けるから」「圧倒的に新幹線ですね。もう飛行機は本当に利用しなくなりました。新幹線はゆっくりできますんで」
小松市民83人に調査した結果、新幹線を利用している、もしくは利用したいと答えた市民は55人、飛行機は28人という結果になりました。

その中でも多くの市民から聞かれたのが、「目的地や早割などのできる期間によって利用する交通手段は異なる」という意見です。

県内を訪れる観光客と言えば、クルーズ船の利用者も挙げられます。

これは、金沢港のクルーズ船の寄港実績を表したグラフです。
北陸新幹線金沢開業以降、県による誘致活動が進んだことで、コロナ禍を除いて寄港する船の数は大きく増えています。特に今年は運航会社の数は18社とこれまでで最も多く、寄港する船の数も2017年に並ぶ55本が金沢港に寄港する予定となっています。

これらのクルーズ船の利用者はおよそ3割は地元・石川県、およそ4割が東京や埼玉、長野といった北陸新幹線沿線からの集客となっています。

県港湾活用推進室 久保光夫室長「クルーズ船には単に港に寄港するというクルーズと、その港から乗るというクルーズがあるんですけれども、北陸新幹線はまさにその港から乗るというクルーズを実現してくれたという風に我々も考えています。船会社も様々な戦略の中で金沢という港から船に乗る。それによって新しいコースが作れるということが分かっていただきまして、それで特にイタリアのコスタクルーズですとか、日本海周遊クルーズというのが始まった訳です。これによってですね、金沢港が全国の中でも発着港という位置づけを得ることができたという風に思っております。」
北陸新幹線の沿線から来るクルーズ船の利用者は船に乗る前後で県内を観光することもできますし、宿泊などで更なる経済効果が期待されます。
県港湾活用推進室の久保光夫室長も、金沢港にクルーズターミナルが完成したことによって、北陸新幹線が海にも駅を作ったと話していました。
全ての交通手段が争って利用者を奪い合うのではなく、お互いが共存してより多くの観光客が石川県を訪れるきっかけになることが期待されます。