わずかなサイズ調整と着こなしで人物の印象は変わる

最後に、心麦の衣装で最もこだわったポイントについて聞くと、丸山氏は「サイズ感」と「小物の使い方」を挙げた。

「シンプルな服こそ、サイズ感が重要なんです。例えば、ニットやジーンズのフィット感を細かく調整するだけで印象が変わる。あと、リュックサックには必ず折りたたみ傘を挿していたのも、日常のリアルな雰囲気を出すための工夫ですね」。

心麦の衣装は、決して華美ではない。しかし、そのシンプルさの中には、彼女の性格や境遇、作品のトーンに寄り添った計算がある。「リュックをルーズに背負って走る姿も、ちょっとぶっきらぼうな感じが出ていて良かったですよね。本作をもう一度見るときは、ぜひ衣装にも注目してみてください」(丸山氏)。

衣装はキャラクターを形づくる“もう1つの言葉”だ。物語を読み解くとき、登場人物の服装の選択にもまた、見逃せないメッセージが隠されているのかもしれない。