映画やドラマにおいて、登場人物の衣装はそのキャラクターを象徴する大切な要素だ。役柄の個性や境遇をさりげなく表現し、視聴者に違和感なく物語の世界に没入させるためには、細部まで計算されたスタイリングが求められる。

TBS系金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』もまた、衣装が作品のリアリティを支えている。浅見理都の同名漫画を原作とする本作は、ミステリアスな展開と緻密な心理描写が視聴者の関心を集めている。そんな本作で、主人公・山下心麦(広瀬すず)の衣装を手がけたのが、スタイリストの丸山晃氏。父親が殺害されるという衝撃的な事件に翻弄されながらも真相に迫る女子大学生の姿を、どのようにファッションで表現したのか。そのこだわりや舞台裏を聞いた。

世界観を壊さないように。主人公の衣装は「シンプルさ」がカギ

ミステリアスな展開が続く本作において、衣装が過度に主張しすぎることは避けたかったと丸山氏は語る。

「ストーリーにノイズを入れないように、シンプルな服装にしました。原作の心麦もオーソドックスな服を着ているので、その世界観を壊さずに映像の中でなじむスタイルを意識しました」。

具体的には、グレーのニットやプリーツスカート、スニーカーといった落ち着いた色合いのコーディネートを基調とし、装飾を抑えたスタイリングになっている。「ベーシックなアイテムを組み合わせつつ、シルエットや素材感で少し個性を出すようにしました。例えば、スカートはほんの少し光沢のある素材を選び、地味になりすぎないようにしています」。

また、ドラマの進行に伴い、心麦の衣装にも微妙な変化が。例えば、赤のMA-1ジャケット姿も印象的だが…。「基本的にはダークトーンが多いですが、火事で私物を失った設定もあるので極端な変化は避け、最小限のアイテムでやりくりするリアリティを大切にしました」と丸山氏。衣装はキャラクターの生活背景を表現する重要な要素であり、心麦のシンプルな服装は、彼女の境遇や性格ともリンクしている。