「命をあきらめないでほしい」
及川さんが、佐藤さんから当時の話を直接聞くのはこれが初めてです。

及川淳之助さん:
「なかなかできることではない。『俺いいから』と自分ならそう言っていたかもしれない」
佐藤裕さん:
「14歳の私が何を考えていたかおぼえていない。当時は及川さんの顔も分からなかった」
いまは公務員として働く佐藤さん。2人の子どもの父親です。

佐藤裕さん:「何年か前に結婚して奥さんと岩手に住んでいます」
及川淳之助さん:「地元の人ですか?」
佐藤裕さん:「岩手の人です」
及川淳之助さん:「(子どもは)男、女ですか」
佐藤裕さん:「女、男です」
及川淳之助さん:「私は娘3人なんですよ」

14年前に救われた命。及川さんは今、若い世代に「生きることあきらめないでほしい」と自らの経験を伝えています。

及川淳之助さん:
「海の中に沈んでいたところ、娘の顔が浮かんでまいりました。その瞬間、これではだめだ。『ちくしょう、どこまでも生きてやる』と思い、また這い上がりました」

及川淳之助さん:
「どうやって助かったかを伝えていくのも生きてきた人の使命かなと思って。私と同じようにやっても助かるかはわからないが、ちょっとでも役に立てばと思っている」

佐藤裕さん:
「正直、自分が助けたとか自分のおかげで生きているみたいなことは微塵も思ってないので。及川さんも生きているし、次の世代のために伝承館で活躍しているという話を聞くと、自分がやったことは無駄じゃなかったかなと思います」