引退試合で「後悔などあろうはずがない」

そして2019年3月、東京ドームでのアスレチックス戦を最後に、イチローは多くのファンに見守られ、45歳で現役を引退。試合後、午前0時近くから行われた引退会見には、200人を超える報道陣が集まった。

2019年3月、引退会見のイチロー

記者:引退の決断に後悔だったりとか、思い残したようなところというのは、ないでしょうか?

イチロー:いや、今日のあの球場での出来事、あんなものを見せられたら後悔などあろうはずがありません。自分なりに頑張ってきたということは、はっきりと言えるので、これを重ねてきて、重ねることでしか、後悔を生まないということはできないんではないかなというふうに思います。

記者:イチロー選手が貫いたもの、貫けたものは何でしょう?

イチロー:野球のことを愛したことだと思います。これは変わることはなかったですね。孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました。ありましたけど、その体験は、未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと、今は思います。だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気なときに、それに立ち向かっていく。そのことはすごく、人として重要なことではないかなというふうに感じています。

日本、そしてメジャーリーグという最高峰の舞台で、地道な努力を重ねてきたイチローは、28年に及ぶプロ野球人生で4367本もの安打を積み上げた。愛し抜いた野球を全うした先に待っていたのは、殿堂入りというゴールだった。