9月に開催される東京2025世界陸上の日本代表選考競技会は男子が、2日の東京マラソン2025で終了した。選考優先順位が現段階で最上位の、JMC(ジャパンマラソンチャンピオンシップ)シリーズⅣの優勝者には小山直城(28、Honda)が決定した。
参加標準記録の2時間06分30秒は未突破だが、世界ランキングによる世界陸上出場資格が5月に確定する見込みで、その時点で代表に決定する。残りの2枠は選考競技会5大会で、参加標準記録を突破した11選手の中から選ばれる。

ポイントの高い3期大会の順位がJMCシリーズⅣの優勝争いを左右

男子の小山はJMCシリーズⅣを確実に勝ち抜いた。

シリーズⅣの優勝者は、JMCの第3期(23年4月~24年3月)と第4期(24年3月~25年3月)のJMCポイント対象の2大会の合計ポイントで決まる。ブダペスト世界陸上やパリ五輪など期間内の代表として出場する大会は、シリーズ加盟大会ではないがポイント対象大会になる。ただし条件としてポイント対象3大会以上に出場すること、そのうち1大会は第4期のシリーズ加盟大会であることが義務づけられていた。

小山は第3期のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠
のうち2人が決定)1位、大阪マラソンの日本人2位で優位に立った。第3期のMGC、
福岡国際、大阪、東京の4大会はGSカテゴリーで、順位ポイントが高い。第4期の選考競技会は福岡国際、大阪、東京と防府、別大の5大会だが、カテゴリーはG1で3期より順位ポイントが低い。これはパリ五輪選考競技会を陸連が重視したからだろう。
 
小山はMGC優勝で順位ポイントが210点、昨年の大阪日本人2位で160点と、3期の2試合で高得点を獲得した。それに対して4期の選考競技会は日本人トップが140点で、小山が大阪で獲得した160点よりも低い。他のGS日本人1位選手たち、つまり福岡国際の細谷恭平(29、黒崎播磨)、大阪の平林清澄(22、國學院大4年)、東京の西山雄介(30、トヨタ自動車)はMGCで上位に入っていない。

JMCシリーズは順位ポイントに、タイムに応じて付与される記録ポイントが加算さ
れるが、順位ポイントの方が差が付きやすいシステムになっている。つまり3期2試合の結果で小山が大きくリードし、シリーズⅣの優勝争いでも優位に立っていた。

細谷、平林、西山の3人も4期の大会で日本人1位をとり、高いレベルの記録を出せば逆転は可能だった。しかし西山は昨年12月の福岡国際で日本人2位、平林は今年2月の別大で日本人7位、細谷は2月の大阪で日本人2位。細谷と西山が4期の試合で日本人1位であれば、記録ポイントの上積みが少ない小山を逆転していた。

勝負強さが連続代表入りの決め手に

小山は昨年の大阪出場理由として、パリ五輪に向けて国際レースで競り合う経験を積むことと同時に、「東京2025世界陸上代表の選考も考えて」と話していた。4期のパリ五輪(23位)と今年2月の大阪(30位)ではポイントを伸ばすことができなかったが、昨年の大阪でしっかり日本人2位に入ることで、シリーズⅣの優勝、すなわち東京2025世界陸上代表を引き寄せていた。

高岡寿成陸連強化委員会シニアディレクター(中長距離マラソン担当)は、「昨年(度)勝負強さを見せてくれました。高い再現性を持っている」と小山の特徴を話した。

Hondaは今年1~2月に、チームとして初めてケニア合宿を実施。そこに小山も参加し、大阪の結果には結びつかなかったが、新たなマラソン練習のヒントを掴んだ。高地から平地に降りるタイミングなど、今後の高地トレーニングで修正すべき点が見つかった。

今年の大阪マラソンのレース後に小山は、東京2025世界陸上への抱負を次のように話した。「もし出場できたらパリ五輪に続いて、世界の舞台で勝負ができます。オリンピックでは不本意な結果だったので、リベンジしたい思いが強いです。東京は気温も湿度も高くなるので、地の利を生かしてしっかり対策をして準備していきたい」。

4期のパリ五輪と今年の大阪は良くなかったが、パリ五輪の経験とケニア合宿など新しい試みができたことを、東京2025世界陸上で生かしたい。