半導体試験「アドバンテスト」 株価4倍 市場が高評価の理由

新聞の証券欄を見てアドバンテストの文字がない日はないぐらい株式市場では話題になっているという株価。2年で4倍という。
――すごい勢いだ。

アドバンテスト 津久井幸一社長:
期待をいただいてるのはすごく嬉しく、気合も入る。経営としては、中長期の視点に立ってしっかりとやっていきたい。

その背後にあるのが業績だ。ここ10年ほどで急成長しており、2024年度の売上高は過去最高7400億円、営業利益は2260億円を見込んでいる。
――今年度の決算(2025年3月期)の見通しを3回も上方修正したとか。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
はい3回した。当初の見通しからですね、さらにいろいろなテストの需要があり、決算、各四半期ごとに増えていった。
――元々電流計の会社。昔、理科の時間に使った電流計か。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
高精度で、すごく非常に微小な電流を、角度よく測れるというのが、最初に発売した製品だった。
――生え抜きだそうだが、入社した頃、こういう半導体絡みの会社になると思ったか。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
思わなかった。どちらかというとその電流計の方のビジネスの開発に携わり、こういう想像はできなかった。

――半導体は、全て1個1個テストしなければいけないものか。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
はい。基本的には、全数テストがベースになっている。なぜかというとその中にあるトランジスタを試験して、品質を高めるということが非常に重要なデバイスだから。
――普通、部品は抜き取り検査だけやっているが、そういうわけにはいかない?
アドバンテスト 津久井幸一社長:
すごく製造工程も複雑で長いんですね。そのためにいろんなところでテストの工程を入れて、何か問題があったときには、早め早めに改善をしていくというプロセスに、試験自体が組み込まれている。
――小さい半導体。後からだと悪いところを見つけ出すことは不可能に近いのか。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
そうです。それと、最後不良になっても、捨てるしかなくなるので、できるだけ前の段階で品質を保つことが重要になっている。
半導体試験「アドバンテスト」 「複雑化」は更なる成長の好機

――量により増えていくという時代から、「複雑化の時代」というのはどういう意味か?
アドバンテスト 津久井幸一社長:
パソコン・スマートフォンに代表される時代。どちらかというと規模・量を作ってコストを下げていく。技術的には微細化を進め、2次元でできるだけ機能を詰めて、大量に作っていくという時代だった。「ムーアの法則」という法則があり、少し減速してきて、技術的な限界も近いのではないかと言われている。
――2ナノまでいくと、細かくするのもコストが高くなるだけという話か。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
研究段階ではその先、1ナノとかオングストロームといわれる時代もプランしているので、そこは進むと思うが、その微細化以上に、このAIの時代になると、コンピューティングパワーがもっと必要だということで、技術的には3次元に積層したり、いろいろな半導体を組み合わせて最適化したり、一方でエネルギーの問題も非常に大きな問題があるので、消費電力も抑えて、環境にも優しくなど、いろんな要求に応えるという半導体産業界の課題が大きいと思っている。
――半導体の構造が複雑化してくると、テストの工程がより複雑になってくるし、より回数も増えてくるのか。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
そういうことです。基本的には、このように複雑になればなるほど、1個1個の半導体を検証していく重要性が高まる。なぜかというと、5個のチップがあるが、一つでも不良になると動かない。

今までは1個の半導体に対して、最後に1回やればテストが良かったというものが、たくさんやらなくてはならない。さらに、チップレットの場合、いろんな会社からサプライチェーンがあって最後に一つにするということになると、プロセス・プロセスでもやっていかなければならなくなった。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
例えばこの5社で組み合わせて行くとなると、どの会社がどこまでの責任か、または不良があったときに、どこを改善すれば全体として一番良くなるか。また不良を発見するだけではなくて、改善するためにも、テスターとテストデータが非常に重要になってきている。
――量が増え、複雑化するからテストももっと必要になってくる。いいことずくめだ。
アドバンテスト 津久井幸一社長:
もちろんお客様とは、いかにそのテストの回数を減らせるかとか、効率を高めるかという議論をしているが、やはり今、AI自体が求めているコンピューティングパワーは遥かに今までの経験を超えるぐらいのハードルを超えなくては実現できない。「テストはコスト」と言われていた時代があったが、今は「品質を上げたり、歩留まりを上げるために必須なものだ」と言ってくれる客が増えた。
――世界シェアトップで58%だが、競合は?
アドバンテスト 津久井幸一社長:
競合はアメリカに1社、大きな競合がある。各地域でもいろんなテスターの開発は進んでいる。