標準語の普及と少数民族の言語

ガイドラインには次のような指導も含まれている。

「国家の標準的な話し言葉と書き言葉の普及を促進する」

これは、漢族が使う標準語を徹底させ、少数民族独自の言語を否定する内容だ。少数民族独自の言語は独自の文化の一部であり、文化を否定されたら反発も起きる。たとえば、内モンゴル自治区では2000年、モンゴル族の子供たちが通う小中学校の「国語」の授業を標準語で行う方針が示された。保護者や教員らが抗議したり、授業をボイコットする騒ぎが起きた。

それにもかかわらず、今回のガイドラインは標準語を義務付ける。さらに、それぞれの地域でどのような言語が使用されているか全国調査を実施することも盛り込んでいる。

AIの活用と教育改革

最後に、ガイドラインで目にした今日的な話題を紹介したい。

「教育改革を支援するために人工知能を推進する。人工知能教育の大規模なモデルを構築していく」

中国の生成AIといえば、今波紋が広がっている「ディープシーク」が思い浮かぶ。高性能AIを低価格で開発した中国企業だ。収集された情報が中国国内のサーバーに保存されることや、中国の法令が適用されることなどから、日本を含む各国でこの会社のAIの使用を禁止する動きが広がっている。

ディープシークの創設者、梁文鋒氏は今年40歳を迎えるという若さだ。ディープシークを設立したのは2023年7月だから、会社ができてまだ2年経っていない。

国家が教育現場をしっかり管理して、その国家の戦略に沿った人材が教育現場から育っていく。第二、第三のディープシークが中国の学校現場から生まれていくかもしれない。空恐ろしい話に思えてくる。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。