医療的ケア児の母親「投げ出したい、口を塞いでしまいたいとも」

 医療的ケアが必要な家族をもつ人たちの生活とはどのようなものなのか、ある親子のもとを訪ねました。

 神戸市で家族4人で暮らす井関宏美さん(46)。生まれつき重度の障がいがある長女・ゆうなさん(23)は3年前、誤嚥性肺炎を起こした影響で人工呼吸器を付けています。

 痰が詰まると窒息死する恐れがあるため定期的な吸引が必要で、多い時は1日数十回に及びます。ものを噛むのが難しいゆうなさんのために一口ずつ口に運ぶため食事は1時間近くかかります。自力でトイレに行けないのでおむつ交換も必要です。

 深夜でもアラームが鳴る度に起きて痰の吸引をしたり、自力で寝返りがうてないゆうなさんの体勢を変えたりと一晩中、目が離せません。仕事も辞め、24時間娘を見守る生活に何度も限界を感じたといいます。
18.jpg
 (井関宏美さん)「『投げ出してしまいたい』と思ったことも実際あるし『口を塞いでしまいたい』と思ったこともあります。『この子さえいなければ』と思ったことも実際あります」

 しかし、宏美さんにとって「ケアが終わる」ことは、ゆうなさんが亡くなることを意味することから、葛藤を抱えています。

 (井関宏美さん)「『終わってほしいな。いやでも終わるということは死だから嫌だな』とか、その行ったり来たりのところがすごくしんどいですね」

 宏美さんはゆうなさんとの自宅での生活に、疲労がピークに達していました。