去年の地震で被災した輪島市の飲食店が1年1か月ぶりに営業を再開しました。


料理をこよなく愛し、住民に愛される主人が、街に希望の光をともします。


「乾杯」の掛け声と共にビールをあおる元常連客たち。

仲間と楽しむ食事と酒は格別です。

団らんを楽しんでいるのは、石川県輪島市河井町にある居酒屋「いち富」。


店主の大下政紀さんは金沢の飲食店などで修業を積み2002年に独立。以来20年余り、地元・輪島で天ぷらをメインにした料理を提供してきました。

しかし、輪島朝市通り近くにあった元の店は能登半島地震による大規模な火災で全焼。

輪島市などが古くから住民に親しまれてきた飲食店街の観音町に整備した「観音町復興通り」で、居酒屋として再出発を決意しました。


テーブル席のみの仮設店舗は16人まで利用が可能で、大下さんは仲間うちの楽しい会話に食事を添えられればと、メニューの数も増やしました。


大下さん「今まではカウンターで天ぷらを直接揚げていたんですけど、テーブル席なら大人数でも話しやすいのは話しやすいかなと思います」

オープンを翌日に控えた2月3日、20年来の常連客を招いて自慢の料理を振る舞いました。


大下さん「前はフライヤーを使っていないんです。鍋でやってたんで。慣れるまで大変かもしれないです」


環境が変われど、出来たての料理を提供したいという大下さんのこだわりは変わりません。

大下さん「やっぱり料理が好きなんでしょうね。店は楽しいですし」

なじみの住民は普段、口数の少ない大下さんが店の再開に情熱を燃やす姿に心を打たれたと話します。


食べるほどに思い出す懐かしい味に舌鼓を打っていました。

常連客「一歩ずつ日常が戻るような感じで、こういう形で懐かしい味も食べられて嬉しいです」

「最高においしいです。震災でこういう飲むところや食べるところがなくなって、仮店舗でも営業してくれて本当に助かっています。ガンバレ!いち富!」

全ての料理を出し終え、胸をなでおろした大下さん。

以前のようなにぎわいを取り戻したいと前を見据えます。

大下さん「楽しかったです。みんなに美味しいって言ってもらえるように頑張ります」


料理人として限られた中でも復興に協力したい。


住民たちが集い地域に根付く店が輪島の街にあかりをともします。