介助する自分ががんに
ところが、高倉さんはこの10年間で、実は2回もがんを発症し、手術を受けています。
いろんな偶然の重なりで治療可能なうちにがんを発見してもらい、イチロー並みの先生に執刀してもらえ、最短の入院で治療が済んで、私が入院中の介護は、大学生の息子と高校生の娘と夫の弟妹の力を借りてなんとか切り抜けることができたのは、やっぱりラッキーなことだったと思うのだ。そもそも夫が発症した時、息子は高校1年生で娘は中学1年生だったというのもそうとうなラッキーだ。子らがこれより小さい時だったら、と想像して何度もうちふるえた。
(P.249「そうだ。私は強運なのだ。」2024年5月8日掲載)
「なかなかの波乗り人生ではあるが」と書いているこの回のタイトルは、「そうだ。私は強運なのだ」です。強いなと思いました。ただ、高倉さんは「人間的に成長し困難を乗り越えた、とかいう話ではない」「介護中の人はもとより、なんか人生いろいろたいへんだぞ!と弱っている人が、クスっとでも笑ってくれたりしたら最高です」と、あとがきに書いていました。
高倉さん:自分の身の回りを自分の目から見ていると大変でも、外から見るとすごく面白い。その面白みが伝われば。もしかして「今すごく大変でつらい」と思ってる人に、「ちょっとでも違う角度でものを見られるよ」ということが伝わればいい。介護する方も、ほどほど。しんどいこともあるけどまあまあ楽しい、介護される方もちょっと我慢しないといけない時もあるけど大体は楽しい、みたいなところを探したいと思いますね。
「果たして僕はそういう風に思えるのかな?」と考えました。毒舌の矢部さんですが、毎日新聞社で同僚だったので、「基本的に優しい人だ」ということを、私はよく知っています。倒れてから後の夫婦のやり取りがあるから夫婦2人もっているんだろうなと、思います。