■暴行事件も「被害者の気持ちは考えられない」
初めて警察沙汰になったのは14歳の時。ホームレスに卵を投げるなどの暴行をして捕まった。だが罪の意識はまったくなく「楽しさ」を感じていたという。
境界知能の少年らは、これをやったらどうなるのか、という先のことを考えた行動を苦手としている。
少年も、自身の感情に従い行動、被害者の気持ちを考える余地はなかった。
(少年)「感情で動いて人をシバいたり、傷つけたりしてしまってるんで、考える能力はなくなってて、楽しさとかに変わってますね。人の心の痛みとかわかんないです。被害者の気持ちが考えられない部分がありますね、相手の気持ちというか。自分さえ良かったらいいみたいな考えが結構強くて。」
■少年院に増える「境界知能」特徴は
「境界知能」は、対人関係を築くのが苦手で、計算や漢字の読みなどの学習も不得意といった特徴がある。だが不自由なく生活できているように見えるため、医療や公的な支援に繋がりづらい。
加古川学園では5年ほど前から「境界知能」と呼ばれる少年が増え始め、今では全体の8割近くにのぼっている。増加の背景には、これまで見落とされていた少年たちの特性が鑑別所で細かく分類され、数として拾い上げられるようになったためとも考えられる。
少年院では入って2か月の間、院内の基本動作を学ぶため「行動訓練」が行われる。「気をつけ、前へならえ」といった号令に合わせ、隊列を組んで行進するなど、少年たちは日常の所作を徹底的に教え込まれる。

しかし境界知能の少年が多い加古川学園では、教官の言うことがきちんと理解できず、注意される少年の姿が目立つ。体操をさせてもリズムに合わせて動くことができない。中には途中で諦めてしまう少年も。指導にあたる法務教官はこう話す。