全国で強盗事件が相次ぐ中、19歳の少年は指示役をやって捕まり、少年院に収容された。
少年は体育館の入り口で一礼したあと、教官に連れられ、私たちの前に現れた。その顔には、まだあどけなさが残る。

「目的はお金ですね。お金メイン。気軽な感じで犯罪した自分がいますね。」

少年は時折笑みを浮かべながら、質問に飄々と答えた。
罪の意識がほとんどなく、ただ感情の赴くまま、安易に犯罪に手を染めていた。
子供の頃から勉強が苦手で、学校の授業にはほとんどついて行けなかった。
少年の IQ は「70台」。「境界知能」と言われる数値だ。

■IQ70台「境界知能」の非行少年

(記者)「本件非行は?」
(少年)「強盗予備と邸宅侵入です」
(記者)「具体的にどんなことをしたの?」
(少年)「強盗を仲間たちと企てて、特定した家の前に実行役を行かしたって感じですね。その時に(実行役が)熊の撃退スプレーとか、木刀とかを持っていたんで。仲間の2人が先に現行犯で捕まって、後々僕の名前を出したと思うんです。身を隠して、いろんな場所に行ったんですけど、最終的に地元に戻った時に逮捕されました。」

兵庫県加古川市にある国内最大の少年院「加古川学園」。収容人数は約120人にのぼる。

暴走族のような不良文化が衰退し、古典的な非行少年が少なくなる中、少年院に収容される少年は年々減少し、今では全国合わせても1600人ほどに過ぎない。(令和5年)。
だがその一方で「境界知能」といわれる少年の割合が増えている。

「境界知能」とは知能指数が平均的な数値と知的障害とされる数値の狭間にある知能のこと。IQは70以上85未満で、専門家の推計では7人に1人が境界知能に該当するといわれている。

強盗事件で捕まり、少年院に収容された19歳の少年のIQは「70台」。
境界知能に当たる。

■学校は馴染めず 親は目をかけてくれず

(少年)「勉強する意味が分からなくて、授業は楽しくなかったですね。自分は周りに合わされへんところがあって、人とズレてるというか。感情で動くことが多くて、同級生に暴力を振るったり、喧嘩したりすることも多くて、友達がだんだん離れていって。」

中学に入っても友達と馴染めず、クラスではどこか浮いた存在だった。次第に学校も行かなくなり、悪い先輩とつるんで非行を繰り返すようになった。

(少年)「夜遊びしたり、万引きしたり。自分、仲良くできる子がおらんくて、悩んだこともあったんですけど。自分を強く見せたいというか、大きく見せたいというか、そういう気持ちが一番強かったですね。」

17歳の時、両親が離婚。少年は母親に引き取られたが、生活は貧しく、親から目をかけてもらっている感じはほとんどなかったという。

(少年)「周りの友達は、喧嘩したら親が出てきたり、夜遊んでたら親が迎えに来たりしてたんですけど、自分は目を向けられていなかったというか、見放されてた感じですね。その寂しさとか悲しさが非行に繋がってるかもしれないです。」