「彼らはやった後、被害者がどうなるのか、その先に何が待っているのか、想像が及ばない。しかも捕まって反省して、一旦は落ち込むが、時間が経つとすぐに忘れてしまう。だからこれまで以上に根気強く関わり続けることが必要。」

■取材を終えて

これまで多くの少年院で少年の取材をしてきたが100人を超える大所帯の少年院は久しぶりだった。それだけ少年の数が減っているということだ。その一方で「境界知能」と言われる少年が多くなっているという声は加古川学園のみならず、あちこちの少年院から聞かれる。最近、少年院に来て感じることは、少年たちの変わりようだ。かつてはいかにもやんちゃで威勢のいい子たちが多く見られたが、今は大人しめで掴みどころのない少年が主流になっているように思う。

今回「境界知能」と言われる少年10人ほどにインタビューをするなか、皆、比較的穏やかで、筋金入りの非行少年と言える子はいなかった。だがその見た目とは裏腹に起こした事件は強盗や詐欺など重罪で、自分より弱い相手を対象に、非行に及んでいた。

彼らは幼い頃から厄介な子として扱われてきた。しかし普通と障害のどっちつかずにいる中で、適正な支援に繋がることはなかった。いわば見過ごされてきた存在だ。少年犯罪は社会の縮図とも言われる。SNSの普及とともに、安易に闇バイトに手を染める少年が増えるなか、犯罪グループの捨て駒として使われる少年たちを生まないためにも、まずは社会が彼らの抱える生きづらさを理解することが必要だろう。