働き方改革で抱える労働時間と救急医療のジレンマ

働き方改革で変わりゆく医療現場に戸惑いながら“イマドキ研修医”が2年間で成長する様子が描かれる本作。実際に、どんな研修医がいるのかを竹内先生に尋ねると「ドラマと同じように、9時5時で働くという考えを持っている研修医もいます」と教えてくれた。「早い時間に帰らなければならないので、責任ある仕事を任せることができない。そうすると、“研修医=お客様”になってしまうんです。しかし、3年目の医者になると一気に当事者に変わります。どうやってやりがいを見つけ、責任感を養っていくかが、主人公たち研修医の課題になってくるのかなと思います」と実情を明かした。
そんな竹内先生の研修医時代は、経験を積むことが何より大事だったという。「技術職であり、職人的な要素がまだ強かった時代なので、“見て盗め”という環境でした。常に必死でしたね」と話す。当時はまだ“スーパーローテーション(2年の研修期間で各科を回る仕組み)”が義務化されていなかった。「その科に決めたら、その科の研修へ行くのが常でした。その中で一部の都市部や先進的な病院や大学ではスーパーローテーションが行われていたので、僕自身はそういった病院を調べて、2年間研修医としてさまざまな科を回りました」と教えてくれた。
現在の救命救急の実情について尋ねてみた。「救急医になりたいという若者は少しずつですが増えてきていて頼もしいです。しかし2024年4月から適用になった働き方改革は、物流問題といわれているトラック運転者の方々だけでなく、我々医師も該当しています。ですが、救急医療は24時間です。夜間にも交通事故は起きますし、心筋梗塞になる方もいます。その中でどう患者さんと向き合い、長時間労働にならないようにするか、とてもジレンマを抱えています」(竹内先生)。
大変なことの中にもやりがいのある医師という仕事

そんな竹内先生が考える、成長するために必要なこと。「熱意と時間だと思います。医師は繰り返しの学問だと思うので、経験値を上げる、それでやりがいが生まれる。時代的に空回りすることもあるかもしれませんが、ベースとして持つ熱意は、それくらい強いものであるべきです」と明かしてくれた。
「人の命、医療レベルにかかわってくる大事なことです。感動することもありますし、やりがいも感じますが、それとは対照的に厳しいこともあります。その両方を知ってもらった上で、救急医療に興味を持つ人がさらに増えてくれればいいなと思っています」と“人材育成の大切さ”も語ってくれた。
有事の際に駆けつけ、救われる命がある。そんな救急医療の現場にも“働き方改革”という壁が立ちはだかる。時代に揉まれながら、人々がどう成長していくか。竹内先生は成長するために「熱意と時間が必要」と教えてくれた。それは医療の世界に限ったことではないだろう。わたしたち1人ひとりが目の前のやるべきことと向き合うことで明るい未来が見えてくるのかもしれない。