■電気運搬船と急速充電器の可能性

パワーエックスは今後、現在岡山県に建設中の蓄電池工場で、定置用の蓄電池のほかに電気運搬船に積載する蓄電池やEV用の急速充電用蓄電池などを製造する予定だ。

こうした中で電気運搬船にも注目が集まっている。
――船にバッテリーを積めばいいということなのか。
すごくシンプルな事例で、離島へディーゼルを送って離島で発電するところを、離島に船が走っていき離島に電気を供給する。オール電化で脱炭素をしながらコストを下げると。この場合の運搬はコンテナ船の形状で十分です。(2025年完成予定の電気運搬船は)洋上風力の送電を想定しており、一番発電している時には風が強いので、風が強い中でも充電できるように特殊な形になっています。
――洋上風力だけではなく、離島への運搬あるいは電力会社を超えた電力の移動、災害時の対応などさまざまなことに応用できそうだ。
パワーエックス 伊藤正裕社長:
短距離の移動ですと全く経済合理性は合いますので、例えば九州の余っている電気を広島に持ってくるとか、北海道で余っている電気を東北に持ってくるとか、そういう使い方でも使えます。

――送電線を引くよりも船で運んだ方が明らかに安いというケースもあるのか。
パワーエックス 伊藤正裕社長:
海底ケーブルはケーブルの稼働が落ちてしまった時も全部コストになります。地震があったり、非常に深い海底なのでよじれたり、負荷がかかったりして止まると復旧まで60日から80日かかるとされます。その時の失った収益もコストに按分されるのです。そういうものを全て見ていくと、だいぶ船の方がコスト優位性が高いケースが結構あります。

――電池は安全保障の観点からも非常に重要な産業だ。
細川昌彦氏:
蓄電池というのは車載用だけではなく、定置用という電力インフラの重要な一つの部品になるわけです。ハードだけではなくソフトウェアが大事で、伊藤社長のところもそうだと思いますが、セキュリティの安全性は一番大事な根幹だというのが一つ。もう一つ、経済安全保障で大事なのは、これからの課題だと思うのですが、さらに上流をさかのぼって電池のセルさらには電池の材料ですね。コストを下げようと思えば中国、韓国に頼らざるを得ないという構造はまだ残っていると思うのです。そこも含めて国内できちっと生産基盤、供給体制を作るというのが本当の意味での経済安全保障だと思うので、そこが今後の課題だと思います。

――急速充電器はいま街中で見る一般的なEVへの充電器と何が一番違うのか。
パワーエックス 伊藤正裕社長:
まず一番は再エネだと思います。いま夜間に家でずっと車を充電していると、火力を使っています。火力電源です。いまほとんどの充電器は再エネが出せないというのが現状です。基本的には夕方、夜間の充電が全部火力だとすると、我々の電池に昼間貯めておいて、そこから車に再エネを出してあげればEVに乗っている価値が本当にあるわけです。電池に入っているので、高圧を電池から出します。系統から高圧を引かなくてもかなりの急速充電を電池側から車に出せますので、インフラと設置のコストが安くなります。再エネで高圧充電ができるというのが特徴です。
――これを全国的に展開するビジネスも考えているのか。
パワーエックス 伊藤正裕社長:
いずれ、これはしっかりやっていきたいと思います。
脱炭素社会に向けて変化の波が押し寄せるエネルギー業界に、いま新たな風が吹いている。
(BS-TBS『Bizスクエア』 10月1日放送より)














