脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーの活用が加速する中、いま注目されているのが蓄電池だ。国内最大級の蓄電池工場を建設中のベンチャー企業パワーエックスを率いるのは、17歳でITベンチャー企業を起業し、ファッション通販サイトZOZOでも活躍した経歴を持つ異色の経営者、伊藤正裕氏だ。伊藤社長に蓄電池の未来を聞いた。

■カーボンニュートラルの世界で目指すエネルギーカンパニー

海運や造船を基幹産業とする街、瀬戸内海に面する岡山県玉野市に新たな産業が生まれようとしている。進められているのは年間で最大5GWhの生産能力がある日本最大級の蓄電池の工場の建設だ。来年にはテスト生産が始まるという。電力ひっ迫の影響や脱炭素社会に向けた動きが加速する中、電気をためる蓄電池が課題解決の鍵として注目されている。

事業を進めているのは2021年に設立されたばかりのベンチャー企業パワーエックスだ。伊藤正裕社長は、若干17歳でITベンチャーを起業し、わずか3年で年商5億円の会社に育て上げた。その後2014年にファッション通販サイトを運営するZOZOに加わり、体型を瞬時に計測することのできるZOZOスーツの開発などを主導していた。伊藤社長はなぜ畑違いの蓄電池の分野に参入したのか。


パワーエックス 伊藤正裕社長CEO:
エネルギー政策もカーボンニュートラルに向けて大きく世界が舵を切っている中、新しいテクノロジーや新しいビジネスモデルでしっかり残せるものがあるのではないかと。ただの電池屋さんということではなく、目指すべきところはエネルギーカンパニーだと思っています

日本最大級の蓄電池工場の建設を進めるパワーエックス。伊藤社長は蓄電池の製造だけでなく蓄電池を使った新たなビジネスの展開を考えている。

パワーエックス 伊藤正裕社長:
最初に注目したのが洋上風力で、洋上で作った電気をどうやって持ってくるのかというところに問題があると聞いて、それを深掘りしていった時にふっと思いついたのが船だったのです。


パワーエックスでは2025年に電気をためて運ぶことのできる電気運搬船を建造し、洋上風力で発電した電気を陸地へ輸送する事業などを計画している。さらに蓄電池を応用した超急速充電器を開発中だ。EVの超急速充電を可能にする画期的な蓄電池で、蓄電池内で電気を高圧に変電することで、充電時間をこれまでの3分の1に短縮するという。大型蓄電池は、さらに以下のような課題解決を可能にするという。

パワーエックス 伊藤正裕社長:
昼間の余剰の太陽光や夜間の使われてない風力などの再エネをしっかり貯めて、それで車を走らせることができます。せっかくEVに乗るのであれば、再エネで乗れるように電池と充電器を組み合わせたという形です。