「お金も人も足りない」維持費は毎年12.9兆円という試算も

 インフラ整備には費用がどれくらいかかるのでしょうか。根本教授の試算によりますと、道路や橋、水道、下水、公共施設を現在のまま全て維持するのにかかるお金は、「毎年12.9兆円」だということです。根本教授曰く「現状、実際の投資額は明らかでないが、自治体では『不足がない』というところは、私が知る限りない」とのこと。

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 実際、どれくらいお金が足りないのでしょうか。例えば、全国に70万本ある『橋』の場合、「架け替えないといけない橋」は年間で約1万本出てくるとされますが、「実際に架けかえている橋」は年間で約1000本。約10分の1しか架けかえられていません。土木職員を抱えていない自治体も多く、“お金もないけれど人も足りない”という状況だということです。

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 また、根本教授は、公共事業にかけるお金の割合は高度経済成長期から半減していると指摘します。高度経済成長期は名目GDPの約10%で、2000年以降は名目GDPの約5%です。公共事業の代わりに増えたのは、社会保障費。少子高齢化に伴う医療費増大で、インフラにお金が使えていない状況となっています。

 ちなみに、「ある時期に集中的にインフラを整備し、50年後に一気にガタが来る」という問題に直面した例が海外であったと根本教授は指摘します。それはアメリカで、1930年代のニューディール政策で集中して作った橋や高速道路が、50年後の1980年代に崩れたということです。これを受けて、アメリカはガソリン税を増税し、特定財源としてインフラ整備にあてたそうです。